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独裁者の後宮
官能リレー小説 - その他

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独裁者の後宮 19

そして、まだ一点を見つめたまま微動だにしないメイリアに、ミレイユがそっとガウンをかけると、ようやくメイリアは驚いた顔で我に返った。
それと時を同じくし、居並ぶ女と兵士達が直立不動の姿勢を取り、奥の扉から美女が現れる。
その美女を見た瞬間、一行は驚きの余り言葉を失った。
その美女はメイリアに瓜二つだったからである。

「い・・・生きて・・・いたの・・・」
蒼白の表情のメイリアが呻くように言葉を発した。
メイリア瓜二つの美女は魅惑的な笑みを浮かべながら口を開く。
「お会いしたかったですわ、お母様・・・30年前に貴女が生んだ娘、マリアンナ・アールネスタ・エスタニアでございます」
優雅なお辞儀を見せた彼女は優しい手つきでメイリアの手を取る。
しかし、メイリアの方は表情が凍りついたままだった。
「あの事件・・・メアリー公女殿下は大公殿下と共に公式的には亡くなりました・・・お腹の子と共に・・・」
一行を拘束した女がそう口を開いた。
「嫁入り修行と称して公女殿下が王宮にお入りになったのが十歳の折・・・伯父である国王陛下のご寵愛を受け、毎夜の如く可愛がられたと聞き及んでおります・・・そして、13歳の折・・・」
「やめてっ!!」
女の言葉にメイリアは悲痛に叫ぶ。
「ジェスカ、もういいわ」
「はっ!、女王陛下」
一行を拘束した女・・・ジェスカはマリアンナを『女王陛下』と呼び跪く。
「伯父と姪との禁断の子を身ごもった事は王家を揺るがす大事、先王陛下は密かに処断されようとしました・・・しかし、軍部の一部の将校はこれを利用し、王家の弱体化を図り大公殿下を標的にしたのです」
マリアンナはしっかりとメイリアの手を取りながら言う。
「お母様、貴女を助け出した若い医師と士官・・・カトリーヌ・ジョバンナとホセ・カルロス・・・そして、既にお腹からいなくなっていた子・・・不自然に思いませんでしたか?」
ホセは後のメイリアの夫、そしてカトリーヌもそうだ。
「……」
あまりにも意外な真相に茫然自失となるメイリア、今のこの感情を表現する言葉すら無いといった感じだ。
「…あぁ〜、何か色々ややこしい設定が一気にいっぱい出て来てちょっと混乱気味なんだけどぉ…」
メイリアに変わってジョンが口を開いた。
「つまり僕の体には旧エスタニア王家の血がバッチリ流れちゃってる…と、そういう事で良いんでしょうか?」
「まあ、端的に言えばそういう事になりますね」
「参ったなぁ…僕これでも“反王政の象徴”みたいな位置付けで今日まで生きて来たんだけど…」
「そう言えばそうでしたね。しかし政権の座を逐われた今となっては最早どうでも良い事ではありませんか」
そう言うとマリアンナは王侯の淑女らしく口元を隠してクスクスと微笑んだ。
「おっしゃる通りで…女王陛下。もしよろしければ貴女の事を“姉上”とお呼びする事をお許しいただけますか?」
ジョンはまるで臣下が主君に対して話し掛けるような口調で尋ねる。もちろん本気ではない。
「うふふ…個人的にはそのように呼ばれてみたい気持ちも無い訳ではないけれど、ここは赤の他人という事で通してもらえると有り難く思います」
「なるほど、僕のような人間を弟として…王族の一員として認める気は更々無いと…」
「そうスネないでください、ジョン・カルロス。私達はあなたを王族として迎えるつもりですよ。ただし、私の“夫”としてですがね」
「「「えぇぇっ!!?」」」
ジョン、メイリア、エレナ、ミレイユ、レオナの五人はマリアンナの言葉に目を丸くして驚いた。
「ちょっと待ってくれ!何がどうしてそういう話になるんだ!?」
その問いに対してはマリアンナの側近ジェスカが答える。
「私達の目的…それはマリアンナ様を女王とし、この国に王制を復活させる事ですわ!」
「なるほどね…婚姻という形でジョンを王制側に取り込んでしまえば現政権は王制を承認せざるを得ない…」
ようやく我に返ったメイリアが補足した。確かに彼女の言う通り、現政権の幹部達(すなわち先代ホセの妻達でありジョンの母達)は多かれ少なかれ皆ジョンを愛しているからして、ジョンが王制復活を支持すれば何も言わずに従うに違い無い。
メイリアは眉間に皺を寄せる。
確かに王党派には良い方策に見える。
しかし、人の感情はそうはいかない。
ホセとジョンの二代でやりたい放題しているように見える国政だが、実は国民を飢えさせていない。
今まで国の富を独占していた貴族や特権階級を追放や粛清し、王政時代は奴隷同然だった国民を食えるレベルまで向上させたのは現政権だ。
勿論、カルロス家に富と権力が集中し、かつての貴族や特権階級になり変わっただけだが、これまで盤石に近い政権運営できたのも国民を飢えさせなかったからだ。
故に反乱は殆ど無かったし、カルロス家の人気も高い。
彼らが悲惨な生活だった王政に戻る抵抗は大いにあるだろう。
そしてもう一つは軍である。
軍はかなり王政アレルギーが強い。

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