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離島
官能リレー小説 - その他

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離島 9

最初に俺が射殺したコピー体と、不意に目が合った。
かなりの邪悪な欲望と強い怨念を感じる。
彼の腕の中で、アヌビスはオーガズムを連続させている。次第に弱弱しくなっていく。命の灯が尽きようとしているのだろう。
他のコピー体は、俺にむけてゆっくりと迫ってくる。
まるで映画のゾンビから演出の要素を取り除けたような、静かな恐怖を帯びておもむろに歩いてくる。
元々が裏社会の人間だったからかも知れないが、何か表現に困るようなとにかく邪悪なものを漂わせている。
「ちっ!!」
銃を構えなおす。一番近くにいたコピー体に発砲した。
胸に撃ち込まれてそいつは倒れるが、まだびくびく動いている。
同族の様子も気にしていないのか、無言で他のコピー体が迫ってくる。
言いしれに圧迫感に、俺は一歩また一歩と後ずさっていた。
幸いなことに、広い場所で逃げ場はあった。
そのまま数歩後ずさった後、俺は全力で駆け出した。
とにかくひとまず、逃げる。
コピー体数名が追ってくるが、俺に追いつける奴はいないようだ。
あまり早く走れはしないのか、それとも変化したてで思うような力が出ないのかはわからないが、とにかく幸いだ。
集落のはずれに、乗り捨てられたようになっていた軽トラがあった。エンジンキーもついているし、壊れてる様子もない。燃料計を見ると、7割ほど燃料が残っている。俺はすぐさま発進させて、集落を飛び出した。
とにかく、月や恵比寿の旦那に連絡を取らないとやばい。
運転中だがとにかく連絡を取る。すぐに女の声で返答があった。
「瑞智、どうしたの?」
「月!アヌビスは本当にいやがった!」
スマホの向こうで月が息をのむ音がした。
とにかく詳細を伝える。
「島の運動場で密輸団がアヌビスに捕まってて、エジプトのミイラみたいにされてた!そのままじたばたしてて怪しすぎるんで、一人射殺したらそいつが今度はアヌビスになって、元のアヌビスを捕まえやがったんだ!元のアヌビスは搾精されて死にかけてた。そればかりか密輸団全員がアヌビスコピーになっちまって、俺を追ってきた!今は手近にあった車で一度逃げてるところだ!」

俺が一気にまくし立てると、月は少しの間黙ってから、こう切り出した。
「瑞智、あなたはこれからどうするつもり?」
俺は運転しながら、しばらく考えていたが、月の問いに答えた。
「あのアヌビスを助けてやりたい」
即答していた。自分でも驚くくらいに自然に言葉が出た。
「わかったわ」とだけ、月は言った。
その後、俺は彼女に指示された場所に軽トラを向かわせる。
そこには古びた倉庫のような建物があった。そのそばにある駐車場に軽トラを停める。
入口のドアは閉まっていたので、軽く蹴ってやると簡単に開いた。
中は暗く、埃っぽい空気に満ちていた。床のあちこちに鉄くずやオイル缶が転がっている。天井には裸電球があったが、明かりは灯っていなかった。

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