幼なじみ 55
「お話はそれだけですか?これからヒロと約束があるので失礼します!」
それを聞くとゆかりは顔をしかめた。
『この子きいてないのかしら?ひろしもなんでこんな子がいいのか…。ふんっ』
愛香はゆかりを無視しヒロの家へ向かった。
ゆかりがいる時は強がって見せていたがもう愛香の心はボロボロだった。涙がこらえられずに溢れてくる…
「ふぇ…っく…」
次から次へと涙が頬を伝う。
『私…何かいけないことしたかなぁ…。もう嫌だよぉ…苦しい…』
ヒロの家へ向かおうと思っていたが足が動かず結局家に帰ってきてしまった。
部屋に帰って来たら、落ち着いたからか涙があとからあとから出てきた。
ヒロのことを信じてる…
でも…ベッドでキスしてたのは何?
あの声だって…
何が本当かわからないよ…
なんでこんなに胸が苦しいの?押しつぶされそうだよ…
ヒロはやっぱり私なんてただの幼なじみなのかな…
ああいう色気のある子の方が好きなのかな…
私…経験少ないし…
ヒロは私のどこがいいんだろう…
色んなことが頭を巡る。
こんなに泣いても涙がでてくる。
こんなに胸が苦しくてこの現実から逃げてしまいたい。
でも…それだけ私はヒロのことが好きなのかな…。
…
すると窓をコツコツ叩く音。見るとヒロだった。
本当はヒロに会う勇気もないし、話せる気分ではなかった。
でもやはりヒロを無視出来ない愛香がいた。
無言で窓を開けるとヒロがいきなり愛香を抱き締めてきた。
「愛香っ…どこ行って…こんなに目腫らして…」
だめだ…ヒロに抱き締められてまた涙が出てきた。
「うっ…ふぇっ…っうう…」
「愛香…??」
ヒロは愛香が落ち着くまで優しく背中を撫でてやった。
「愛香…ちょっと話したいことがあるから待ってたんだけど…。なんかあったのか?」
状況を知らないヒロは愛香に聞いた。
「ふぇっ…っ…ヒロ……」
また泣き出す愛香…。なんかおかしい…。
ヒロは愛香の様子に心配になった…。
窓をみてはっとする…。
お互いの部屋は近い…もしかして…愛香は見てた??
「愛香?」
「ひっく…ひ…ヒロぉ…も…やだよぉ…」
ゆかりとの事情を話そうと思っていたが愛香を落ち着かせることが先だ。
ヒロは胸騒ぎを覚えた…。
「愛香…どうした?」
「っく…ヒロと…ふぇっ…あの子が…キスして…」
愛香はしゃくりあげながら言葉を発した。
「あ…いか…」
ヒロは呆然とした。
やっぱり愛香は見てたんだ。
「愛香…泣かせてごめん…。違うんだ。俺の話を聞いて欲しい…」
愛香は泣き腫らした目でヒロをみた。
ヒロは真剣な目できちんと本当のことを話してくれると愛香は確信した。
少し怖いけどヒロの話を聞こう…。