幼なじみ 54
「あっ…んんっ…いやぁ…」
明らかに聞こえるように声を出す。もちろん俺が押し倒された身で何も手は出してない。
「おまっ…何言ってんだよ…」
「ふっ…彼女に聞こえたかしら♪彼女どう思うかしらね…。あんな声聞いてまさか何もなかったって言っても信じてくれるかしら…ふふ」
俺は怒りが込み上げゆかりを突き飛ばした。
「ぜってえ許さねえ…帰れっ」手をあげたいのを我慢し無理やり玄関から追い出した。
「私だって許さない!!ひろしだけ幸せになるなんて…」
ゆかりが玄関のドア越しに怒鳴るのが聞こえた…。
ヒロは玄関に座り込み頭をかかえていた。
俺はなんでゆかりの企みに気がつかなかったんだ…
家にまであげて…
愛香…きっとあいつの声聞こえたよな…。
今頃泣いているんだろうか…
ちくしょ〜…
愛香をもう泣かせないって決めたのに…
でも、俺は何もしていない。きちんと愛香に事情を話そう…。
あいつならわかってくれる…。
誤解が大きくならないうちに話さなくちゃな…
ヒロはさっきの出来ごとをきちんと話そうと急いで愛香の家に行ったが愛香はいなかった…。
『どこ行ったんだよ…早く帰って来いよ…』
仕方なく家へもどり愛香の帰りを待った。
その頃…
亮の家からの帰り道、愛香はヒロのところへ急いでいた。
家の近くの公園まで来た時…例によってゆかりと出くわした。
というよりゆかりは愛香を待っていたようだった。
「あれ〜?ヒロの彼女さん?」足早に通りすぎようとする愛香を引き止めた。
「あ…こんにちは…」
「さっきはごめんね〜。ひろし借りちゃって。」
「いいえ…私…急いでいるので失礼します…」立ち去ろうとする愛香の腕をゆかりが掴む。心なしか掴む手に力が籠っている。
愛香は怖くなった。「離して下さい…」
ゆかりはあっさり手を離したが、続けて話してきた。
「あの後私達どうしたか気になる?」
ふふっと嫌な笑い方をする。
「いいえ、私はヒロのことを信じているので。」きっぱり言い切った愛香にゆかりは苛立ちを覚えた。
「ふ〜ん…。まぁいいわ。彼女だからって安心してるとひろし離れていくわよ。ひろし優しいから私を部屋にあげてくれたのよ。ふふ♪」
「それはヒロの口からきちんと聞きます。あなたがでまかせ言ってるかもわからないし…」愛香は内心泣きそうだった。でもゆかりには負けたくない。
「ひろしに聞いて本当のこと答えてくれるかしら?きっとあんなことしたら本当のことなんて言えないと思うけどね…ふふ」
勝ち誇ったように言うゆかりに愛香は涙をこらえ震えていた。