優柔不断な恋心♀×♂♂ 6
あの日・・・・
突然の土砂降りの雨で、チャリで帰宅することはできなかった。
上がるまでの数時間、エロイ動画を視聴覚室の大型ディスプレーで観賞しようと言ったのは、雅志だった。
それならば無修正物があると言う、おたく野郎が賛同し、数人のエロ野郎たちがソワソワと廊下を歩いていた。
「よっ!雅志、一緒に帰えろーぜ!」
白い歯を見せながら爽やかに微笑む、身慣れた笑顔がそにはあった・・強士だった。
「いや、俺ちょっと・・」 雅志は口隠った。
「俺らぁ〜今からオ○ンコ観賞タイムゥ〜強士も来いよぉ〜」
野郎の1人が強士を誘い、なぜか雅志は戸惑った。
雅志にとって強士は、親友と言ってよかった。
互いの家を行き来し、共に宿題をこなし、スポーツで汗を流し、付き合い始めた吉原リカのことは、1つ残らず相談した。
それなのに、どういう訳か強士とはエロい話しはしなかった。
下ネタで盛り上がるような、そんな関係ではなかったのだ。
それでも、強士の部屋のゴミ箱に溜まったティッシュを見て、"こいつはどんな女を想像してオナるのか?"とは気にはなったが、それ以上の詮索はしたことが無かった。
「いいのか?」
何故だか強士は、雅志に聞いてきた。
「ああ、たまにはこういうのもいいんじゃね?」
雅志は戯けて腰を振って答えた。
"たまにはこういうのもいい"・・それは本心だった。
強士と思っていることを何でも話せる間柄になりたい気持ちがあった。
そして自分は強士が思っているよりも、エロイことばかり思っている男だと分かって欲しかった。
画像が始まると、雅志はやたら強士のことが気になった。
「強士、勃った?」
雅志は掠れた声で小さく聞いた。
「あ、ああ・・・お前は?」
雅志は目線で頷くと、その膨らみを指でさした。
なぜか雅志は嬉しかった。強士と今まで以上に近しくなれた気がした。
もっと総べてを曝け出せば、男と男の友情が強くなれると思った。
しかし、それがいけないかった。雅志は図に乗り過ぎた・・・
露出した雅志を指で弾き、呆れ顔で強士は出て行った。
雅志は独りになった気がした。
見下ろす校庭に、激しい雨に打たれ走って行く、強士の姿が見えた。
あれほどに昂っていた雅志の性器はすっかりと収縮し、包む皮がすっぽりと先端を覆っていた。
寂しかった…
強士に帰られたことが雅志には重くのしかかっていた…
そんな雅志の心情など気にも停めないエロ野郎共は、ただひたすらに画面に向かい、自身を慰めることだけに邁進している…
(こいつら…)
大切な友達の比重は明らかに強士に傾いていた…
幾ら分かり合える友達であったとしても、その総てを共有しようとした自分の愚かさを、思い知らされた…
(強士…すまん…)
雅志は床に丸まったままのズボンをパンツと一緒に引き上げると、慌てて教室を飛び出した…
簀の子に腰を下ろし、靴紐を結ぶ自分の姿が、正面の鏡に写っていた。
その火照った赤い顔は、そこを見ずとして強士には分かっていた。
確かに1週間は、1人Hはしていなかった。
無修正物を見るのも久しぶりだった。
それが故だと、自分を言い聞かせてはみるものの、それは多分、別のところからくる昂りなのだと・・・
そんな自分を、強士自身、自分が一番よく分かっていた。
ガラス越しに打ち付ける大量な雨が、見慣れたグランドを隠していた。
その中に身を置けば、こんな自分も覆い隠してくれるだろうと思えた。
強風に煽られながらも身を屈め、強士はグランドに走り出た。
冷たい雨が狙うかのごとく強士の全身を叩いても、火照った股間は静まることはなかった。
自転車ならば追いつけると、雅志は懸命にペダルを踏みつけた。
普段であれば、通りまで5分もかかりはしないのに、強風と豪雨の為に幾倍にもそれは膨らんでいた。
それでもぼやける視界の先に、通りを渡る強士を見つけた時、雅志は大声で叫んでいた。
「キヨォォォォォォジィィィィ!!!」
聞こえたのか?
強士の身体が止まり、雅志に向かいゆっくりと振り向く・・・
雅志は自転車を捨て、必死に駆け出した。
強士の元へ・・・と・・・
雅志?・・
強士は確かに視界に入る雅志の姿を認めた。
感極まり、通りを戻ろうとしたその時だった。
『パァァァァーーーパァァァァァァーー!!』
突然現れたトラックのクラクション・・・
強士は身を硬くした。
気づいた時には病院のベッドにいた。
涙ぐんだ強士の顔がそこにはあった。
無事だったんだ・・よかった・・
あの時、雅志は強士をトラックの前から間一髪で跳ね飛ばした。
そのまま腰に激痛を感じ、雅志は気を失ったのだ。
脊柱管の強い打撲での損傷・・
雅志の怪我も、それだけで済んだ筈だった。