レースクイーン裏物語 2
発表会では今シーズンを戦うマシンとドライバー、スタッフも紹介され最後に華であるレースクイーンが舞台に立ち3人がポージングをとる。
前シーズンがなかなかの好成績だったこともあり今年のチームには本気度がうかがえた。
「お疲れさま」
「あっ、社長!」
菜桜が一人の男性を見かけ、駆け寄る。
長身でおしゃれな好青年、といった感じだ。
菜桜に社長、と呼ばれた男性は奥にいる明日香と栞の方を向いて軽く会釈する。
2人も戸惑い気味に頭を下げる。
「あっちゃん、シーちゃん、こっちこっち」
「えっ…」
菜桜に促され近くまで行く2人。
「うちの事務所の社長、谷川直樹さん」
「初めまして」
爽やかな笑顔に明日香も栞も一瞬見とれてしまう。
「こ、こちらこそ」
「初めまして…」
仄かに顔を赤らめる栞と、俯いて小声で挨拶する明日香。
それでも直樹は爽やかな笑顔を崩すことはない。
「菜桜ちゃんの言うとおり、すべてにおいて魅力的な2人だね」
「でしょっ?」
「よかったら2人もこの後一緒に食事に行かないか?もうちょっと話もしたいな」
「えっ」
「あ、は、はいっ」
爽やかな笑顔で面と向かって言われたら2人も断る理由なんて見つけられない。
直樹は自ら運転し、明日香と栞を夕食に連れた。
夕食の席で直樹は2人に芸能界入りを勧める。
「もし2人にもその気があるなら、うちの事務所で」
「そ、そんな…私なんて」
「確か2人ともまだ学生だったね、学業と両立してもできる。こちらからもちろんサポートもするし」
「はい…それはありがたいですけど」
「親にも相談してみないと…」
直樹の真摯な言葉に心は動くが、踏み切るまではいかない。
「返事は今すぐじゃなくていいから」
直樹は2人に名刺と連絡先の書かれた紙を渡し、夕食は終わる。
直樹と菜桜は2人、都内のホテルにチェックインした。