俺の開拓物語 3
ヒルデガルトは、クスリと微笑みながらふと言った。
「こうしていると、デートみたいですね」
「……そうだな」
俺はちょっと照れ臭くなり、それだけを答えた。
「あれ?」
「いかがなさいました?」
「人……か?」
やや向こうの岩陰から、人間……か?銛を構えた男達が現れた。
おかしいな。
「データでは、人間やそれに近い生物はいないはずなんだが……」
「単なる調査漏れかもしれません。ただの原住民だとよいのですが、どう出てくるかわかりません。マスター、ご注意を」
「向こうは六人か…友好的になれればいいが、向こうもどうも身構えてるようだな。俺達の正体がわからず警戒しているのだろうな」
ひとまず、できるだけ愛想よくしつつ俺たちは彼らの接近をゆっくりと待つ。
その間に観察すると、褌一丁の姿に、片手には魚を突くためだろう銛を持ち、腰には籠を下げている。
そろそろ話し合える距離かというところまで近づかれたので、友好を示すジェスチャーなどをしてみた。
褌姿の漁師?達はニマニマと笑って、そのまま近づいてきた。
「−−−−−−−−−−」
「あんたら、どこからきた?」
「とおいとおい、向こうからだよ」
「−−−−−−−−−−−−−−」
案の定、俺達にはわからない言葉を話しているが、自動翻訳機がすぐに訳してくれた。
「木星」号ではなく、さらに遠くを示すようなしぐさをしながら言った俺の言葉も、向こうの言葉に翻訳して返される。
「−−−−−−−−−ー」
「ならば来てもらおうか」
「私は四条勝大。彼女はヒルデガルト。この地に住みたくて来た」
「−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ー」
「−−−−−−−−−」
「ならば、ついてこい」
どうやら村にでも案内してくれるらしい。彼らを先にして、歩く。すると間もなく、岩場にさしかかる。
いきなり、褌漁師たちが俺達に襲い掛かってきた!
「何をするんだ!」
「マスター、きゃあ!」
俺には四人、ヒルデガルトには二人がかかってきて、俺が銃を抜く前に押さえつけられてしまう。人間にしては、妙な強さとぬめったような肌触りだ。
俺たちが何を言っても、男たちはもはや何も言わない。
それどころか、俺とヒルデガルトの服を脱がせようとする。
「やめて!やめて!」
「ふざけた真似するな!ぐっ!」
羞恥で抵抗するヒルデガルトの姿を見て、俺も激昂するがすぐに押さえつけられた。
「マスター、大変です!あれを!」
「どうしたんだ!」
俺もヒルデガルトも、半分以上脱がされた時、いきなり彼女が言った。その顔は、近くのある岩を見つめている。
すると、ヒルデガルトの両目が光った。ビームが打ち出され、その岩が炎上する。
「岩が……炎上?」
「あれが、この褌漁師達の正体です。幻覚を見せて、私たちを捕食しようとしたのでしょう」
見る見るうちに燃え上がり、岩は岩でなくて肉の塊となり、褌漁師たちの姿は霞のごとく消えていった。肉の塊からは、大人の腕ほどの太さの何本もの触手が出ていたが、ヒルデガルトがさらに目からビームを撃ち、それを潰していく。
「幻覚作用のある捕食生物か……珍しいな。ヒルデガルト、ありがとう。
だがよくわかったな。助かったよ」
「多くの触手がうごめいているのが、脱がされかけたときにわかりました。そのエネルギーを辿って、岩に擬態した本体に行きついたのです。別個体がいないとも限りません。一度車に戻りましょう…きゃっ!私ったら……」
「あ、ああ……そうだな、すまん」
ヒルデガルトの説明を聞いていて、彼女が半裸にされて立派なおっぱいを晒していることにお互いに気づいて、俺も視線をそらし、彼女もあわてて体を隠す。
触手生物が焼け落ちるにおいも消えないうちに、俺たちは服を着なおして装甲車へと戻った。
俺たちは、一度「木星」号へ戻ることにした。
装甲車を走らせながら、さっきの奴の疑問を口にする。