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俺の開拓物語
官能リレー小説 - SF

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俺の開拓物語 1

 人類が宇宙に出るようになって、200年程が過ぎた。
 星々が煌めく宇宙の、とある片隅。

「ここが、俺の星……」

 軍の給糧艦を払い下げてもらった宇宙貨物船「木星」号の船橋で、俺、四条勝大は青く輝く星を眺めていた。
 自分の星を持ちたいと、親の遺産を元手にあれこれ努力して増やした金で得た、この地球型惑星。ここを開拓して、俺は大牧場主のような悠々自適の生活をするんだ。
 大気圏内を目指して進む「木星」は、すでに大気圏内進入を目指して自動で進路や速度を調整している。
 そこに、俺と同じようなクルースーツに身を包んだ女が声をかけてきた。

「マスター、そろそろ安全モードへ」
「ありがとう、ヒルデガルト」

 彼女、ヒルデガルトは俺がこの船と星を得るにあたって一緒に買い付けた、秘書兼メイド用のバイオノイドだ。
 俺は、操縦席に座り安全姿勢に体を固定した。
 隣の席で、ヒルデガルトも副操縦士席に座り、その豊満な身体を安全姿勢に固定した。
 
 空間モニタに新たに表示を出して、この星のデータを映し出す。
 この星を買う前にも、買ってからも何回も目を通したデータだが、実物を前にして改めて見てみると、感慨がわいてくる。
 よくぞこんな恵まれた環境の星を買えたと、自分を褒めてやりたくなるぜ。
 おおよその大きさは地球と同じ。二千年前に大量絶滅があったらしく、動物がかなり少ない。だがその影響で今の気候や酸素濃度も地球とほぼ同じ。
 おかげで安く買えたんだが、家畜化できる動物の少なさは問題かもしれない。まあ、あれこれと持ち込む自由度が高いってことでもあるからよしとしよう。

「重力圏突入まで、あと60秒、59秒、58秒……」

 「木星」のメインAIによるカウントダウンが始まり、カウントが0秒になったあたりから、機体が少しずつ揺れだす。
 ブリードガス噴出装置で大気との直接接触を避けたり、冷却材を機体外面に貼ったりしてあるとはいえ、機体外面は高熱を持つ。
 どっちも消耗品だから、一度大気圏内に突入すると補充しなければもう一度宇宙に出たときに大気圏再突入ができなくなるのが弱点だ。
 といってもドライアイスなどのありふれた材料だから、俺の星で補充できるんだけどな。
 落下していくから、まだ重力は感じない。

「高度、90000m」

 「木星」のメインAIが現在の高度を告げ、俺は操舵して水平近くまでゆっくりと船首を上げた。大気圏内運用も想定されて建造されている「木星」は、飛行機的な有翼構造をしている。
 だから大気圏内の操舵は飛行機に近く、船内に重力が、ゆっくりと増えてきて俺とヒルデガルトの体に重みがかかってきた。
 高度を下げながら眼下を眺めると、緑なす大地と、それを縫うように流れる大河があった。このまままっすぐ行くと、地球でいえばパラオあたりのような海が広がる海岸にでるはずだ。
 
「ドラッグシュート、第一次展開します」

 メインAIの声がして、がくりと船体が後ろに引かれたような衝撃が来た。減速用パラシュートを開いたんだ。
 その後もさらに2回ドラッグシュートを展開して減速しながら滑空して、海岸の少し前。平原地帯上空まで飛んできた。ここは十分な広さがあって滑走できるからだ。
 予定通り、ここに着陸させる。基本的に逆噴射は使わない。推進剤製造用の簡易プラントも積んであるが、材料がすぐに手に入らない場合もあるし、船に積める大きさでしかないから、満タンまで製造するには時間がかかる。
 昔ながらの飛行機のように、ランディングギアを出して、どさっと地面を踏む。
 少し滑走してから、がくっと船体が後ろに引っ張られた。ドラッグシュートを自動展開したからだ。
 無事に停止すると、俺達は喜びを爆発させた。

「停止しました。周囲大気成分……事前情報通りです。人間の活動に問題ありません」
「マスター、おめでとうございます!」
「ああ、ついに来たんだな。ここが、ここが、俺の星だ!」

 シートベルトを外した俺達は、お互いを強く抱きしめあう。


 
「つっ……」
「マスター、いかがなさいました?」

 ヒルデガルトが心配そうな声をかけてくる。

「一瞬、軽い頭痛がしたんだ。ここまでの旅路で疲れてたんだろう」
「だとよいのですが、実は、私も頭に一瞬だけ違和感を覚えました。気を付けてください」

 喜びに水を差すこの痛みの正体に気づくのは、この少しあとの事だ。

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