開宴ブルー 2
「じゃあ、お先に戻ります」
俺は足早にその場を離れた。これ以上ここに居てはいけない気がしたからだ。
「あぁ、ゆっくり休め」
後ろから隊長の声が聞こえたが振り返らずそのまま進んだ。
俺は隊長のことが好きだ。尊敬しているし信頼もしている。
けれど、同時に恐怖心もある。あの人は一体何を考えているのか、それがまったくわからないからだ。
その得体の知れない何かに引き寄せられ、飲み込まれてしまいそうな感覚に襲われる時がある。
そんな時は決まって胸の奥がざわつき、股間が熱くなる。
「隊長、何をされるつもりなのかしら」
「俺にもわからんよ」
帰途についた俺は、共に生き残った女性隊員のフェリシア・ゴール少尉と話していた。
「フェリシア、お前から隊長に聞いてみてくれないか?女同士なら聞き出しやすいだろ?」
「そうね…話してみます」
俺達の隊長、青山貴子大尉は、クールビューティーという言葉がピッタリの凛とした美人だ。
男女問わず人気も高いが、これまでの激戦で俺たちの部隊もこれだけ犠牲を重ねてきた。本当なら一度下げられて再編成しているところだ。
「いや、やっぱり自分で聞くよ。フェリシアは自分の部屋で休んでいてくれ。」
「そ、そうですか。先輩、わかりました。」
フェリシアは俺の後輩で新人隊員で素直で優しい娘だ。頭もよく、スタイルもなかなか良い。
フェリシアと別れ俺は隊長室のドアの前に来た。隊長室に来るといつも緊張してしまう。
深呼吸してから隊長室のドアをノックする。
コン、コン。
「入れ。」
部屋の中から青山大尉の声が聞こえた。
「失礼します」
俺はゆっくりと隊長室のドアを開け、中に入った。室内は隊長の香水のような香りと、かすかなタバコの匂いが混じった独特の香りがした。
「何か報告があるのですか?」
俺が部屋に入ると、隊長はすぐに俺に気づき冷静な口調で尋ねた。彼女はデスクに座り、書類に目を通していた。その姿はいつも通り、隙がなく美しい。
「いえ、そのようなものではありません」