幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜 94
後ろのクルーザーには、船室に炬俐・紅夜叉・遠呂智。
甲板は操縦と見張りの黒服が4人乗り込んでいた。
グッタリして動かない菊名は、残りの黒服達と一緒に前のクルーザーに乗せられた。
「うっ……酒臭い」
それが船室に入った紅夜叉の第一声だった。
船室の片隅では遠呂智が大口開けて眠りこけ、周りには酒瓶が何本も転がっていた。
「まったく見っとも無い奴だ。……起きて下手に暴れるよりかはマシだがな」
外観と同じく内装も立派なものである。
バーカウンターも備え付けられており、炬俐もグラスに酒を注ぎ、一気に呷る。
「おい、一体これからどうするつもりだ!」
壁際に立った紅夜叉が炬俐に尋ねる。
武器の小太刀も取り上げられ、もう無力だろうと思われたのか、蛇による戒めは解かれている。
「ふんっ、お前らのせいであのホテルはもう使えなくなっちまった。別のアジトでしばらくほとぼりをさます」
更にもう一杯酒を呷ると、紅夜叉の方を向きニヤッと笑う。
「いざとなりゃお前を手土産に、'あいつ’の力を借りてホテルを取り戻すさ。
'あいつ’はお前みたいなガキが好みだったからな」
「あいつ? 誰だよそれ?」
五凶である炬俐が頼る程である。
余程力のある妖怪かと思い、紅夜叉が尋ねる。
「お前も赤千穂側の妖なら名前ぐらい知っているだろ。そいつの名は…」
「待て炬俐!」
名前を言おうとした炬俐を、蛇が制止する。
「このガキ怪しいぞ。もしかして盗聴器でも隠してるんじゃねぇか?」
「はぁ? 褌一丁なのに何処に隠し……」
反論しようとした紅夜叉が気づく。
目を細め、いやらしい笑みを浮かべて蛇が自分を見ていることに……
「蛇よ」
「んっ?」
「お前もあんなガキが好みなのか?」
蛇の様子に気づいた炬俐が尋ねる。。
「炬俐は興味無いのか?」
「胸で谷間の作れん女に興味は無い」
「悪かったなっ!」
炬俐の言葉に紅夜叉が怒声を上げる。
「ともかく、俺は褌の中調べた方がいいと思うんだがよぉ」
「まったく……おい、小娘」
炬俐がどうでもいいといった感じで、紅夜叉に命令する。
「脱げ」
「……」