幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜 93
―――ホテル地下?階―――
白面や菊名のいる階を通り越し、エレベーターは最下層まで落ちて行った。
「ふぅ、危ういところだった」
エレベーターの残骸を見下ろしながら、宙に浮いた炬俐が安堵の息を漏らす。
「てめぇ! 空飛べるんだったら、もっと静かに降りてこいっ!」
「黙れっ! 蛇、なんでこいつを助けたっ!?」
「お前もうちょっと考えて行動した方がいいぞ。こいつは人質に使えるだろ」
尻尾の蛇が胴に巻きつき、紅夜叉も一緒に宙に浮いていた。
更に紅夜叉が足を首に絡ませて宙吊りにし、太郎も無事であった。
ギギギギッ……
炬俐が手でエレベーターのドアを開き外に出て、蛇に巻きつかれたままの紅夜叉が後に続いた。
そして太郎は……紅夜叉が足で首を絞めてしまっていたため、別の意味で落ちてしまっていた。
外では炬俐の部下の黒服たちが十数人ほど待ち構えており、何人かが太郎をロープで縛りあげ、担いで行く。
「太郎、ゴメン…」
通路を少し進むとコンクリートの通路から、土や岩の露出した洞窟のような広い場所へ出た。
そこはちょっとした体育館ぐらいの広さがあり、真ん中には真っ二つに割れた大岩があった。
「ここは、まさか……」
「そうだ、我が封印されていた場所だ」
クックックッ…と、炬俐が何かを思い出して笑いだす。
「このホテルを建てた前のオーナーが、地質調査とやらでこの空間の存在を知ってな、好奇心からここまで穴を掘り、そして我を封印から解き放ったというわけだ」
「…その前のオーナーってのは、今どうしてるんだ?」
「俺にこのホテルを譲って、今は隠居の身だ」
炬俐がニィッと邪悪な笑みを浮かべ、割れた大岩を指さす。
「あの下でな」
「………」
炬俐達に連れられ洞窟の奥に進むと、かなり広い地下水脈に行き着いた。
どうやって運び入れたのか、結構立派なクルーザーが二隻、岸に泊められている。
「おい、女達はどうした?」
荷物をクルーザーに運び入れている黒服に炬俐が尋ねる。
「それが、菊名と遠呂智様はなんとか船に乗せたんですが、他の女達を連れてこようとしたらエレベーターが落ちて…」
「チッ、せめて白面だけでも連れて行きたかったが……仕方ない。
準備が出来次第、出航するぞっ!」
準備が終わり、クルーザーが岸を離れる。