エルドラ戦記 10
そして、タオルと着替えを持つと、風呂へと歩き出す。
鼻歌交じりに廊下を歩くと、脱衣所の扉を少しだけ開け、中を確認する。
脱衣所にはいくつも棚が置いてあったが、使われているのは一つだけだった。
姿は見えないがジェラは風呂の中にいるらしく、水音が聞こえてくる。
なら遠慮する必要は無いと思い、服を脱いで素っ裸になる。
そして、全部脱いだ所で、風呂場の戸がガラッと開いた。
「アー、いい湯だった」
そこから出てきたのはジェラではなく、見知らぬ女の子だった。
歳はエルドラと同じか、少し下ぐらいだろうか。
胸のふくらみはなく、股間も無毛で童女と変わらないほどだ。
髪は小麦色で、目は綺麗な緑色をしている。
(これは、これでいいな……)
ジェラと正反対の少女を見て、知らず知らずに自分の股間の逸物を大きくさせてしまう。
そんなエルドラの様子を気にもせず、少女はエルドラに挨拶をする。
「こんばんわ、いい湯でしたよ。貴方も入れば疲れが取れますよ」
そう言ってフラフラ歩きながら、着替えが置いてある棚まで行く。
その様子をぼけっとしたまま、エルドラは見送る。
(胸は無いけど、お尻はいい形しているよな、もしかして誘っているのかな)
少女は棚からタオルを出して髪を拭き、そしてメガネをかけた。
そして、エルドラの視線に気がついたのか、振り返ってみる。
そこには、股間のご立派様を晒したままのエルドラがいた。
その時、脱衣所の空気は一瞬止まった。
エルドラは後にあの時は本当に時間が止まっていたと、証言している。
そして、時間は少女の叫び声によって動き出す。
「キャー、変態、痴漢、強姦魔ーーッ」
少女は名をミモナといい、職業は魔法使いである。
歳は13歳であるが、その歳に似合わぬ深い知識を持っていた。
だが、知識を得るために、長年読書を続けた結果、視力が落ちてしまった。
眼鏡が無いと何も見えず、最初にエルドラを見たときは、男だと気づかなかったのだ。
エルドラはいきなりの悲鳴に驚き、慌ててミモナの口を塞ぐ
彼女はジタバタと暴れたが、ジェラのような巨躯なら兎も角、女の細腕ではエルドラを振り解く事が出来ずに抑え込まれてしまう
だが、時は既に遅く、外ではバタバタと人が駆けつける足音がしていた。
このままでは自分は性犯罪者になってしまう。そう冷や汗をかいているエルドラは一先ずミモナを抱えて逃げ出した。