おてんば姫、ファニーの冒険 66
「フリッカ、大丈夫なの」
今度はフリッカが病気になったと思い、心配してかけよる。
しかし、フリッカは満足げな様子で笑いかける。
「姫…様、心配要りません。ただ凄すぎて、足腰が立たないだけです」
「そ、そうなんだ…」
どうやら心配する必要はないようだ。
ボッキ茸の薬効によりヘンドリック王は完全回復した。
それどころか以前よりも精力絶倫、10歳も若返ったように見えた。
(弟や妹の一人や二人は出来たかも…)
ファニーは本気でそう思った。
ティーエも同じ事を考えたようで。
「お世継ぎ騒ぎが起きないように取り計らわないといけませんね」
と、冗談なのか本気なのかわからない調子で言った。
「はぁ。なんにしろ安心したわ」
「心配かけたな」
『全くです』
ティーエとフリッカの声がハモった。
それがおかしくてみんなで笑った。
ヘンドリック王快癒の知らせは国中を沸かせた。
久しぶりに訪れた明るいニュースによって、国民に笑顔が戻った。
だが家族や友人をモンスター達にさらわれた人たちは、未だに笑顔が取り戻せないでいる。
無論、ヘンドリック王もこのままで手をこまねいでいるつもりはなかった。
ベッドから起きあがると、早速閣議を始めた。
討伐部隊についてはすでに準備はできていた。
第一騎士団と魔術師、それにマイリーの神官戦士団を中心とした精鋭だ。
また獣人たちも直接戦闘を加わることはなかったが、偵察任務を引き受けてくれたので、だいたいの場所は判明している。
だが、直ぐには出陣しない。
まずは事前の根回しが必要だからだ。
メメール山脈は北のセーブル王国と北西ドーリス王国に接している。
それらの国に対して事前通知も必要であるし、モンスター達が逃げ出さないようにするために、山脈に通じる道を封鎖する必要もあった。
だが、セーブル王国は快諾してくれたが、ドーリスは色よい返事を使者に出さなかった。
そこへ騎士の一人が飛び込んできた。
「申し上げます!タフト公国より使者が参っております!」
「判った。謁見の間へお通ししろ!丁重にだ!俺もすぐに行く!」
ヘンドリック王は急ぎ謁見の間に向かった。
「陛下、お久しゅうございます」
使者はタフト公国の宰相で、先代公王の弟であるハッター伯爵であった。
「病気で倒れたと聞き、慌てて参りましたが、どうやらご回復のご様子。誠に喜ばしきことかと存じます」
「いやいや、ご老体の方こそお元気そうで何よりです」
二人とも旧知の間柄であり、またハッター伯はヘンドリック王の叔母を妻にしているので、義理の叔父甥の関係に当たる。
最初の挨拶が終わると、直ぐに要件へと移った。
「ところでステファン公子に行方はどうなっておるのでしょうか。噂ではメメール山脈にある魔物どもの要塞に閉じこめられているとのことですが、いかがあいなっているのでしょうか」