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幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜
官能リレー小説 - ファンタジー系

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幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜 40

「あ・あふっぉふん」
気持ちよさの余りに大狼の鼻から喘ぎ声が漏れる。
「しーちゃん。ここが気持ちいいんですね〜」
なにより自分から見たら卵の殻をお尻につけているような子供にここまでいいようにされている自分が情けなかった。
そんな光景を祖父はじっと見ている。
彼、しーちゃんが“しっぺい太郎”では無いことに薄々だが気づいていた。
日中どう化けの皮を剥いで懲らしめてやろうと考えながら買い物の帰り道、戦隊ヒーローごっこをしている子供達とすれ違った。
(ひょっとしたらあの妖狼はただの通りすがりで、気紛れで正義の味方をしたかっただけなのかもしれないな)
という考えに至り、しばらく様子を見ることにした。
珠美から解放されても疲れて寝込むと悪夢を見ているのか呻きながら激しい脊椎反射を繰り返していた。
「ァオン・くぷぅ」
「ここですか?ここですね?」
見つけたツボをいじくり回されるまま悶え、後ろ足が空中を掻く様にパタパタ痙攣するしーちゃんを追いつめる珠美。
(このままの方が面白いかもしれないな)
玄安が孫が犬と戯れる微笑ましい光景に笑みを浮かべたその時、背筋を悪寒が走った。
「やっ、こんな所から失敬失敬」
声のする方へ視線を移すと塀の上に骨面をつけた『何か』が座っていた。
「昔の同僚の臭いがするから辿ってみれば…いやいや、殺られちゃってたか〜…」
そう言うと珠美を守る様に四足で構えたしーちゃんを見る。
「主は…まさか…」
玄安がしぼりだすような声で問うと
「御察しの通り、『狂骨』ですよ」
本来結界で入れないはずの庭先にストンと降り立つ狂骨。
骨面で遮られてはいるが視線が合ったという感触と同時に一瞬、気が遠くなる。『並の』人間ならそのまま奈落に落ちていってしまっていただろう。それほど狂骨の存在は『死』に近いのだ。
「あ、ごめんなさいねぇ。小さい子がいるのに。死気は抑えときますんで…」
そう言うと辺りを包んでいた濁った嫌な空気が普段の澄んだ空気に置き換わった。
「…封印されていたはずの怨霊が我が家になに用だ」
「嫌だなぁさっき言ったじゃないですかぁー同僚の臭い辿って来たってー。まぁ死んでたみたいだけど」
そう言うと立ち尽くす玄安の隣に腰掛けた。
「さて……昔とはいえ同僚を殺してくれた奴らをどうしてやろうか?」
狂骨の言葉に空気が凍りつく。
準備がしてあればまだしも完全な不意打ち。しかもこんなに近くに珠美もいるのだ。戦いと呼べるものになるのかさえ怪しい。


永久に感じる程の静寂の後


「なーんつってな」
狂骨の一言に張りつめた空気が一気に萎んだ。
「べっつにどーこーしようなんて考えちゃいませんよ。猿が殺られたのだってどうせ自業自得でしょ?」

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