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幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜
官能リレー小説 - ファンタジー系

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幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜 39

バスから降りるとそこは白面が想像していた鬱蒼とした藪の中のボロ小屋ではなく、手入れされた庭園のロータリーだった。
目の前には清潔感溢れる白いホテル。
開かれた入口の中は赤い絨毯が敷かれている。
建築する妖怪もいるが、デザインや施工法などからこれは人間が作ったものだと白面は結論づける。
(奪った訳じゃないなら、人間達とのかなり太いパイプがあるわけか…)
「ホキャア!フキャ!」
「ホッホッホッホッ!」
白面の周りで猿達がホテルの豪華さに興奮してはしゃぎ出す。
「あーもう、ウルサい!」
人間のボーイが猿の群の中を恐る恐る白面に近づく
「あのお客様。ペットは構いませんが、放し飼いは困ります」
「あたしのペットじゃないしぃ」

一方そのころ
紅夜叉は赤千穂に連絡を取っていた。
『まぁ。白面ちゃんは大丈夫かしら』【ああ、赤井お姉様…】ゲシ
「とりあえずこっちも蛮悟のおっちゃんと南区の駅前に向かうから」
『あらあら、蛮悟さんと一緒なの?迷惑をかけちゃ駄目よ。』グリグリ【ああ、草履も良いけどできたらその純白の足袋で踏みしめて…】
「…千穂ねぇ。さっきから変なノイズがあるんだけど」
『ご免なさいね。駅に向かう途中、うちでおみくじを引いた参拝客が相談を持ち掛けてきたからお相手してるの』ドゲシ【ああ、もう人生諦めてもいい…】
イベントも無いのに、ただ巫女萌〜を求めて長い階段を登って来る男達がたまにいる。
窓口で会話をするためだけにお守りやおみくじを購入するある種の貴重な収入源。
紅夜叉が帰ってくる前に赤千穂に勧められるままに引いたのだろう。
真に受けて途方に暮れて駅前を歩いていたら赤千穂を見つけて《諦めきれない》と泣き(抱き)ついたところを蹴りを入れられているのだろう。
(既に最凶を入れていたのか…帰ったら抜かないと)
しかし、入れて早々に引いたこの男の運気って。
『私も電車で向かうから駅で待ち合わせましょう』【紅ちゃんも一緒に踏んでくれたらもう極ら…】グシャ…プープー
紅夜叉は通話終了ボタンを押し携帯を蛮悟の懐に戻すと運転手に急ぐよう促した。

一方そのころ
大狼は悶えていた。
珠美は学校から帰ってくると、ただいまの挨拶と着替えもそこそこに庭に飛び出し“しーちゃん”に抱きついた。
「これ珠美、しっぺい太郎様が困っているぞ。遊ぶのもいいが宿題とかはどうした?」
「大丈夫です!ちゃんとやります!」
祖父の声もそっちのけ、しーちゃんにじゃれつく。
お腹を撫で回され、本能的に仰向けになってしまい、されるがままのしーちゃん。
頭の中ではアリスのことや見知らぬ赤千穂のこと、珠美やその祖父のことと考えることが沢山あるのに珠美のおかげで落ち着いて考えることができないでいる。

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