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魔導志
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔導志 230

「散々痛め付けてやったら、部下を見捨てて芋虫みたいに逃げ出したアイツだよ。」
「あ、あなた、まさか…」
最悪の状況だ。レイラは、思考の全てを、一刻も早くこの場から離れる事の一点に絞った。脚に力を込めようとした瞬間、
「そう、アタシが剣竜の長ブレイド。ところで、」
レイラを見ていた子供の全身が形を変えていく。巨木を薙ぎ倒しながら、彼女は本来の姿に戻った。全ての生物の中で最強の種族、竜族の剣竜。
人に近い四肢を鱗で覆い、鋭く伸びた爪と牙は、この世の物とは思えない程の美しさだった。
「あ…あ…」
言葉を失い、見上げる事しか出来ないレイラに、剣竜の長は続けた。
「我カラ逃ゲラレルト、思ッタカ?」
「…くっ、っ!」
震える脚に力を込め、レイラは飛んだ。が、フワリと撫でるように動かしたブレイドの爪が、周囲の巨木と共に、レイラの片足を落とした。
「うぁああああ!」
ただ切り落とされた痛みと違う。傷口に、さらに手を突っ込まれたような激痛が走る。
「ホゥ?チカラヲ感ジル。アーカイブ、カ。」
遠く首都ルクードの方角を眺めて、ブレイドは目を細める。
「気分ガイイ。オ前程度ノ魔族、逃ガシテモ、イイダロウ。」
元の子供の姿に戻ると、ブレイドは告げた。
「忘れないように。アタシは何がどう転んでもアナタを簡単に殺せる。変に嗅ぎ回らない方がいいよ?」
「ぐうぅ…絶対に、許さないから…」
竜化を解いた瞬間、凄まじい激痛から解放された。が、失われた片足の傷口は、当然痛む。
「ハハハ、魔王もアナタぐらい気骨があったらね。名前は?」
「…レイラ…」
「ふ〜ん、」
ブレイドは爪で手首を小さく切ると、レイラの傷口に血液を垂らした。
「脚は自分で持ちなよ。すぐ付くから。」
「慈悲の種族って訳。屈辱だわ。」
「次は無いけど。さてと、アーカイブが来るし帰って交尾の準備しよ。」
「…ちょっと興味あるじゃない。」
「村に入ろうとしたら即座に細切れにするからね。次は無いと言ったよ?」
「…」
「休んでていいけど、歩けるようになったら真っ直ぐ帰ってね。それじゃ」
一方的に言って、ブレイドは森の奥に消えた。もう気配も感じない。
「やっぱ…血が必要ね。マキとセガルド、使う時が来たかしら。」
立ち上がったレイラは、忌々しそうに森の奥を見つめて歩き出した。
「それではー、明日からのペア部門に移りたいとー…」
シングル戦が終わり、ジュスガーが翌日のタッグ戦の段取りの説明に入ろうとした時、解説席に座ったジュダの元へ血相を変えた兵士が飛び込んできた。
「ジュダ様っ!ジュダ様っ!」
「なんだいそんなに慌てて。子供でも産まれそうなのかね?」
「ログナス、ログナスがっ!」
「…なに?」
ジュダの顔色が瞬時に変わると、息を切らしている兵士を人目の付かない場所へと連れて行こうとした。
「ご来場のクソども。」
「???」
闘技場の中心に、ローブ姿の男がいつのまにか立っていた。高らかに上げた声は、脳に直接届いてくる。会場の人間全てに聞こえると言うことは、高等な魔法である事に間違いない。
「サ、サイ!!」
見知った顔と声に驚いたランドルフが声を上げると、サイは無表情で続けた。

「大ニュースだ。ログナスの船団が上陸した。すぐに補給線を確保して近くの村から焼き払っていくだろう。」
「なっ!」
ざわつく会場。ログナスとの関係が悪化していた事はルクードに住む者なら誰でも知っている。それでも、にわかに信じられない話であるが、その者の異質な雰囲気が、それが真実だと思わせる何かがあった。
「無くなるべきなんだ、パパもママも見捨てて、こんなクソ祭りで盛り上がっているような国なんて…ねぇ?シュバル国王様?」
「…………」

転移魔法で現れた前王シュバルは、ボロ切れのようになった汚れた衣服を身に纏って、無精髭を生やしていた。以前のような王族の雰囲気はいっさい失われ、浮浪者のような風体で俯いたまま黙っている。
「お兄さ…シュバル!なぜここに!?」
「グルルルル…人の王よ、白虎の後ろへ。アレはもう人に非ず。」
「え!?」
「シュバル様、ここに集まった全ての者が反逆者です。」
「反…逆者…?」

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