PiPi's World 投稿小説

刀王伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 16
 18
の最後へ

刀王伝 18

慈愛のある微笑みを向けられ、リンも悪夢の事を話して悩ませる事は避けようと。

「ああ。腕がなまっちゃわないようにね」
「立派な心掛けだと思いますよ。私にもあなたのような力があれば…いえ、だめですね」
「諦めることはないと思うぜ。俺だって最初は…」

だが、ソフィアは何かを振り切るように首を横に振る。

「余計な事を口にしてしまいました。教えに背いて神に仕える私どもが力を振るうわけにはまいりませんから…」
「……」

戒律を理由に諦めるソフィアを見て、リンも複雑な気持ちであったが無理押しするわけにもいかず、黙り込む。
呼び出す若い女の声がした。

「ソフィア様、朝食の支度ができました。今日は私が腕を振るったんですよ。さあリンさんも」
「おっ、ありがたい」
「セラスさんは料理上手なんですよ。さあ、参りましょう」
「ああ。楽しみだよ」

心温まるような表情を向けてくるソフィアの言葉に、リンも一も二もなく続いた。
食堂には、ソフィアやセラス、それに他の女性たちが集まっていて、肉こそ無かったが野菜や穀類を使った簡素なようで気の利いた味わいの料理が各自の前にあった。

「ふぁ〜あ…よく寝た…」
「やっと起きたのか」

爆睡していたローザがようやくやってくる。

「アタイのメシは…コレか〜ちょっと足んねーけど…」
「ちょっとアンタ!」

無神経な発言をしてしまうローザに、さっき料理を作ったというセラスが怒りの声を上げる。
なかなか気の強そうな娘で、身なりこそ粗末だが細い腰と対比させるように突き出された胸は結構あった。

「連れが失礼した。おいローザ」
「あ…すまねえ」
「いや…良いのです。前はもう少し多く食べられたのですから」
「マルチナ様…」

謝罪しつつローザを窘めたリンだったが、それに答えたのはソフィアとは別の尼僧だった。
リンとは親子ほど年の離れたマルチナはこの教会の責任者でもあり、ソフィアの指導役でもあった。
そしてソフィアと共にグロウズ伯領の虐げられた女性たちを匿っている。

「ローザさんも悪気があっての言葉ではないのでしょう。そしてご飯が少ないのはセラスさんのせいでもありません。お互いに気を静めてくださいね」
「アタイが悪かった…許してくれ」
「ああ…最近ひもじくなって気が立ってたんだ。すまないね」

互いに頭を下げあい、場に落ち着きが戻った。
食事の途中、不意にセラスがリン達に話しかけてきた。

「ねえ、貴方達二人だけであっちこっち旅してるんでしょ?ローザさんなんてこんな体だし、レイプされそうになっても相手殴り殺しちゃえそうよね」
「アタイはそこいらの人間には後れを取らないぜ。人間の男なんかじゃ満足できないしよ」

自信満々なローザの物言いに、村娘たちが色めき立った。

「でさ、お願いなんだけど、貴方達で私らを鍛えてくれない?」


「アタイらがあんたたちを強くするのか?」
「乱暴な男にひどい目に遭わされるのはもう嫌なの!グロウズの雇ったならず者連中だってそう!」
「せめて、彼氏と喧嘩になっても互角に渡り合えるくらいにはなりたいの!」
「殺っちまいたい」
「マルチナ様やソフィア様にお世話になりっぱなしだから、自分でなんとかしたい」
「おい…リン?」

いっぺんに村娘たちの思いが爆発し、ローザは取り囲まれて慌てた。
そばにいたはずのリンを見るが、彼も一緒に囲まれてしまっている。
すると突如リンが楽し気に叫んだ。

「その願い、請けた!」
「本当?!」
「嬉しい!」

「よし、全は急げだ!」
こうして、リンはセラスたちを鍛えることにした。
この出来事がきっかけで一ヵ月後、リンとローザは仲間を得て、グロウズ伯とその手下たちを全員始末することに成功した。

そして、グロウズ伯爵に代わってグロウズ伯領をリンが統治することになった。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す