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刀王伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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刀王伝 17

「ぐぅ〜・・・」
「ノンキに寝てやがる・・・だがコイツを見てると何だか心が和むな」
悪夢を見て嫌な記憶を呼び起こされたリンであったが、気持ちよさそうにイビキをかいて眠るローザの寝顔を見ている内に次第に気が楽になっていった。

「ふぅ・・・ちょっと散歩にでも行ってくるか・・・おっと、服を着ていかねえとな」
ローザを起こさないよう静かにベッドを出たリンは、服を着て部屋を後にした。

…時刻はもう夜中だった。
リンは一人で教会の外をブラブラ歩きながら、さっきの悪夢の事を思い出していた。
あれは夢だが、夢ではない。
そう、実際に彼の過去に起きた事なのだ。
出来れば忘れたい記憶である。
だが忘れたくても忘れられない。
いや、むしろ忘れてはいけないとばかりに、今でも時々、夢として現れる、あの日の光景。
きっと忘れないために見ているのだ。
無意識の内に。
夢として。
辛い記憶でも。
忘れてしまった方が幸せだとしても。
忘れてはならないのだ…。

「ヘッ…柄にも無くセンチになっちまったな。戻るか…」
リンは教会に戻ろうとした…その時である。
 ガサガサッ
近くの茂みが動いた。
獣?…いや、人だ。
「…誰だ!?」
リンは咄嗟に落ちていた石を拾って投げつけた。
「ギャッ!?…ク…クソォ!!」
叫び声がして人影は逃げて行った。
恐らく伯爵の手下だろう。
隠れて様子を見張っていたらしい。
「チッ」

今日はついてない。忘れてはいけない、だがとても嫌な夢をまた見てしまったこと、そして気分転換に散歩をしていたら幸か不幸か伯爵の密偵がいた。
遅かれ早かれと思っていたが、そうは思っていてもこういう時に現れるものかと、何と運がないことかとリンは自分を嘆きながら、暫く夜の散歩を続けたのだった。


「やれやれ、いい気なもんだ。」

リンが遠くに見上げる丘の上の伯爵の城から漏れる明かりが夜空にきらめいている。
警備の明かりだけではないだろう。
村には明かり一つない。

教会に戻ったリンは、爆睡するローザを起こさないように静かに寝床に戻った。


「くはぁ・・・朝か・・・」

窓から射す早朝の陽射しがまぶしい。ローザはまだ爆睡している。
リンは一つ伸びをして起き上がる。
教会の中庭に出ると、剣の素振りを始めた。

「151、152・・・」

「367、368、369…」

一心に剣を振り、身体の感覚に神経を集中する。心が少しずつ静寂へと近づいていく。額に汗して剣を振っているうちに悪夢による心の澱みが抜けてきた。

「おはようございますリンさん。稽古ですか?」
ふとかけられた声に気付いたリンは腕を止める。
振り向くと両手で桶を持ったソフィアが立っていた。

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