陣陽学園〜Fight School〜 85
チビりかけて悲鳴が漏れる程怖い。
特に可愛い顔だけに相当怖い。
凄む幸乃を純華が背中から抱きしめて耳元で囁く。
「気に入ったからって、あんまり意地悪するんじゃないぜ・・・可愛い顔が台無しじゃないか」
純華に抱きしめられ、甘いロリ声に変わる。
なんだかとっても怖いものを見てる気がする・・・
「ああそうだ・・・今晩からお前の棲家はツナ子の家な」
背筋を震わせてた白磁に、跨った鋭利を可愛がりながら彦一が声をかける。
白磁は劣等から出て以来、アキ、真也と共に彦一の家に居候していた。
4LDKの学生とは思えないマンション。
しかもそこには押しかけ妻の女医、葛城琴乃以下毎日日替わりで女が沢山。
殆どの女達は喜んで彦一に貢いでいるらしく、相当なジゴロぶりである。
『葛城先生のご飯、美味しかったんだけどなぁ・・・』
彦一だけでなく居候3人とその他同居人にまで裸エプロンで食事を用意してくれる彼女の腕前はかなりのものだった。
あれが食べれなくなるのはちょっと惜しいが、居候の立場は落ち着かない。
いや、何よりも一晩中聞こえる喘ぎ声に寝られない・・・
ただ、今度の居候先はわざとかと聞きたくなるぐらいの場所。
鮪漁船ツナ子・・・
アフリカ系と思わしき褐色の長身天然美少女は、いつもニコニコしていてこの組では白磁にとって苦手なタイプではない。
しかし、彼女はもろに異教徒・・・
しかも、長い年月争ってきた異教徒だ。
ちょっと心情的に抵抗感があった。
「白磁クンと家族ニなれて嬉しいデス」
怪しくも流暢な日本語で屈託なく言うツナ子。
丁度、彼女のダイナマイトなバストが白磁の顔の高さ。
これは自分の頭より確実に大きいなと感想を頭に浮かべながら、白磁は必死にこの状況を自分の中で処理しようとしていた。
そして、彼の混乱はそれで終わらなかった・・・
ガラリと開いた扉から入ってきた女子の一団。
20名ぐらいであろうか。
殆ど下着が見えそうなスカートに、へそ出し胸元強調の改造セーラー服。
この集団は知っている。
組に所属しない野良連合、俗に言う学園野良愚連隊の一つ、バットガールズだ。
確か、憂国騎士団と山吹組が抗争する前に争い、敗けて主要メンバーが劣等落ち。
更に他の組にも狙われ崩壊した筈だ。
白磁達も当時は、この不埒な連中に制裁を加えた。
それが何故ここに・・・
彼女達のリーダー格が口を開いた。
「山吹の姐さんに話があるんだ!」
まるで彼女達の登場を解っていたように純華は笑う。
「ああ、言ってみな」
「あたし達全員を山吹組で拾って欲しい!」
白磁達3人を除いて誰も驚いていない。
そうなる事は折り込み済みなのか、彼女達の復帰も手を回したのだろうか。
ただ理解できる事は、今まで自衛はしても組抗争に興味を示さなかった山吹純華が、組の勢力拡大に乗り出してきていることだ。
「勿論だ・・・ミシェル、六郎、面倒見てやんな!」
「「はいさ、姐さん!」」
ギャルの纏めはギャルなのか、ギャル系キャバ嬢を生業とする二人にバットガールズ達を任すように手配すると、彼女達は一様にホッとした表情となる。
劣等に落ちて愚連隊の限界も悟ったのだろう。
愚連隊は組に比べて校則や河護衛市条例による制限が少ない分だけ権限も弱い。
何より規律の低さは結束の薄さを招く、自由の代価は不自由という大人の矛盾だ。
頭を下げるのはバットガールズ残党をかき集めた現リーダー栗ヶ原華奈美(クリガハラカナミ)、通称カナミックス。
サイドテイルで誤魔化しているが、髪の合間に傷跡が見えた。
剛腕で頭皮ごと髪を引き千切られたのか、一体どんなゴリラと喧嘩したのだろう。
そんな彼女らは山吹純華立ち会いで、島岡六郎と吉良ミシェル仕切りの元、山吹組に草鞋を脱いだ。
あくまで山吹組『傘下』バットガールズは本家より格下。
士道ならぬ『極道不覚悟』があれば即破門を理解させた上での仲間入りだ。
彼女達もそれは理解しての上だ。
傘下に入ると言うことは、生殺与奪を委ねると言う意味だと理解してる。
「じゃあ、脱いじゃおか」
ミシェルの声に全員が素直に脱ぐ。
この学園に入るのは格闘経験が多少なりともある事が前提なので、割とアスリート体型の者が多い。
しかし、男子より女子の方が審査が甘い(と言うか容姿優先)ので、そうとも限らない場合もある。
そして、バットガールズは戦闘力なんて最低レベル。
その身体は、ムッチムチのメス体型。
劣等で生きるには困らなかった事だろう。
彼女達が戦力になるのかと言う白磁の疑問は、純華以下だれも思っていないようだ。
何かしらの利用価値か、劣等くぐり抜けて覚醒したのか・・・
「援交とクスリとカツアゲはご法度な・・・働ける子は店を紹介するし、働けなくてもちゃんと食わせてやるから安心しな」
六郎は説明しながらボディチェック。
性的欲求と言うより、どの店で働かせるかチェックしてるようだ。