陣陽学園〜Fight School〜 81
その一戦・・・つまり『白い烏の旅団』との戦いは出流がいない間に開戦まであと少しとなってきた。
賭場荒らしや、レ○プされる振りでの逆レ○プ。
それらで随分向こうも窮地に立たされているらしい。
資金はほぼ枯渇、傘下の手下達も逃亡気味。
それどころか(肉体で)籠絡されて仲間を売る連中まで出る始末。
今まで正面対決を避けてきた向こうも、立合いを求めてくるのも時間の問題だろう・・・
純華の予想通り、この日より数日後・・・
『白い烏の旅団』から正式な宣戦布告が来た。
「よく我慢したな・・・2人減ったが、イキのいいのが3人増えた・・・決戦にうってつけの環境だ」
教卓に胡座かく純華が周囲を見渡して言った。
「やっと・・・やっと、奴らぶっとばせるぜ!!」
フラグ乱立男KAZUMAが叫ぶ。
叫びたいのは彼だけでない・・・全員だ。
ひたすら白烏から逃げ回り、時には殴られレ○プされる日々。
その他組織への自衛こそ認められていたがそれも最低限とされ鬱々とした日々。
ようやく本気が出せる状況に山吹組は活気づいていた。
「僕のミシェルを散々なぶってくれたお礼をしないとね?」
島岡六郎は手加減用の安物リボルバーから正規のS&W22口径に持ち変えていた。
「やぁんロッくんたらぁ〜?野獣共に汚された純情可憐なお姫様だなんてぇ〜?」
言ってねぇよとツッコむ者もいない中、小柄巨乳の女子プロレスラー吉良ミシェルが、ぷるんぷるんと小躍りしていた。
この寝取られフェチ夫婦の場合、純粋に報復行為という『お礼』かどうか微妙である。
今回の交戦規定は黒服と紺服の混成。
当然黒服ともなれば本身の刀剣類に加えて38口径程度の近代銃も認められる。
先込めリボルバーやマスケット、種子島等の古式銃は例外的に大口径の許可が下り易い。
近代銃でも射程が短く、基本的にバラダマ前提の散弾銃も概ね同様。
白兵武器もまた一撃死コースのえげつない刀剣や長柄は色々ある。
「合戦は明日の1700、準備を怠らないでね?」
皆に声をかける短刀術の高輪まどかは出刃包丁とよく似た剣鉈の研ぎ加減を確かめていた。
今回は十字軍抗争以上に死傷者が出る可能性が高い。
敵の生死いかんより敵を征してこそ勝利たる武術。
文句あるなら何度でもかかってこいよという喧嘩。
メンツの問題から積極的な殺しにかかる組は殆どない。
それでも紺服でさえごく稀に、黒服ならばたまに死人が出るといった具合。
憂国十字軍はパカパカ実弾ブッ放していたが、大抵は途中で降参させていたのが現実だ。
さもなくば射撃で浮き足立った相手を包囲し白兵で戦闘不能か戦意喪失に持ち込めば済んだ。
当の憂国十字軍出身、幕辺白磁もそんな具合であった。
手元には劣等抜けの際に購入した、雷管古式銃では普及率と耐久性の高さだけが取り柄、幕末のゲベール銃。
今回その鉛弾と銃剣が人の命を吸う事になるかも知れない。
白磁は仮釈放時まではギプスで封印されていた右腕の震えを堪えた。
手近な山吹組員に聞いて回り古式弾薬調達の相談する。
前回の抗争で白磁を叩きのめした蜂丸市花が何事も無かったかの様に応じてくれた。
同様に扇谷真也は相変わらずのヤンキー口調でも彼なりの敬意を払い、射撃選手の六郎に頭を下げ実弾の仕入れ先を教わっていた。
再び一礼するなり携帯で業者に12ゲージ散弾の販売価格が学割どうのと交渉を始める。
空波アキに至っては相変わらず不機嫌そうに鎖鞭の手入れを終え、勝手に備品の工具を漁りゴミ箱から手頃な鋼材を選び出すなり工作を始める。
その様子をブラックスミス加治木美智枝が咎めた。
しかし彼女は十字架を模した投げナイフの工作精度を確かめるなり、喜色満面『やるじゃないか?』と仏頂面なアキの背中を叩く。
とりあえず白磁はゲベール銃と予備のマスケット短銃、そしてサーベルを兼ねた銃剣の手入れを済ませていた。
弾薬の材料が届くまで手持ちぶさたな所、現れたのは高見沢賢治。
平気で女子の顔面を砕き、笑顔で金的玉潰しならぬ満的栗潰しまで喰らわせていた、上品ヅラのサイコ野郎。
白磁が絶対関わりたくないと思っていた奴だ。
「君はどこか、るーくんと似ているね。」
その甘いバリトンが正直キモい、と白磁は思った。