香港国際学園 81
「さっきのは何なん?・・・」
奈々子も始めて見たようで驚いて誠一に聞いた。
「ああ、あれは烏天狗・・・ウチの家の部下さ・・・」
そう答える誠一。その誠一に誠二が聞いた。
「兄ちゃん、もしかしてマジ?!・・・何もマジにならなくてもさ、一旦こんな馬鹿げた争いから抜け出せば・・・」
「誠二・・・」
普段の誠一とは違う、威厳と威圧感の篭った声・・・その声に何かに気付いた誠二は身を竦め黙ってしまう。
「誰に向かってその口をきいた!・・・僕の怒りに彼等が触れた・・・理由はそれでいいだろう」
「申し訳御座いません!・・・御館様」
誠二がその場に跪く・・・まるで兄弟と言うより主従の関係であった。
「これは鈴木家の喧嘩だ・・・雨宮と鳳は参加自由にしておこうか」
誠一が夜栄と晶に言うが、2人とも不敵に微笑む。
「面白いじゃない!・・・参加するね・・・」
「晶も〜・・・バンバンやっつけちゃいますぅ〜」
そして、誠一は再び現れた烏天狗から何かを受け取り、才英、夜栄、晶、誠二を連れて裏山を降りたのである。
文冶、涜狸、勘太郎の3人だが・・・返り討ちに合い、地面に突っ伏していた。
「つっ・・・強え・・・」
「ふふっ・・・あたしが強いんじゃないわ、あんたらが弱いだけ・・・これでも五虎将軍で一番弱いのよ・・・」
微笑む女性は1人・・・3人はこの女性に完膚なきまでやられたのだ。
「さて、今から止めを刺してあげるんだけど・・・楽なのと苦しいのどっちがいい?」
まるで殺すことを楽しむような表情と言い回し・・・だが、そんな女性の前に1人の男が立ち塞がった。
その男はさっきの烏天狗と同じ格好である。
「何者?・・・邪魔すると殺すわよ!」
不敵に手招きする男、女性はその男に持っていた九節鞭を放ったのだ。
文治達にすら、軌道を読ませず叩きのめした九節鞭だが、男にはかすりもしない・・・いや理人と戦った時の主姫みたいに九節鞭の方が避けている感じなのだ。
「貴方も『浮身』を使うのね・・・なかなか楽しませてくれるじゃない!」
「あんたと同じくな・・・五虎将軍のナスターシャ・ボルドアさんよぉ!」
『浮身』・・・文治達3人には聞いた事が無い言葉だった。それが使えるからこの2人は戦えているようなのだ。
「で、貴方何者なの?」
「俺か・・・俺は『熊野』の大烏・・・六錠要だ!」
「マジかよ・・・あのクソガキが・・・」
文治は仮面を取って素顔を晒した要を見て驚く。
「すまんな、『浮身』を使えるの黙ってた・・・これは封じ手なんで使えねえんだが、主姫の一派だけ使えるんで禁を破った・・・とは言え、孫一様の命令だがな」
「カハハハハハッ!!そうか孫一の命令か」
二人の間に刹那が現れた
「どうりでさっきから見た顔が動き回っていると思った」
「刹那!!邪魔をするな!!」
そう言い九節棍を使ったが刹那には当たらない
「『浮身』つったけか?これ」
「なぜ貴様が…」
「そりゃあオメェ俺も同じ『血』が流れてるからさぁ…もっとも『鬼』と交わったために消されたはずの『存在』だがなぁ…」
その瞬間、刹那がナスターシャの首を喰いちぎった
「なっ…」
「カハハハハハッ!!うめえなぁ…力がみなぎるぜ…」
そう呟くと刹那の体が虫化していく
「見るか?完全体になった俺の力を」
そう言う間に全身を漆黒の甲冑が覆った
しかしその姿はもはや虫ではなく人の姿に限り無く近い
さらに赤いマフラーがマントになっている
「来い『鬼神刀闇烏』」
その瞬間刹那の右手に片刃の剣が握られた
「鈴木、雨宮、鳳に受けた迫害という名のこの痛み、今返す!!!」
凄まじいまでの怨みと憎しみの念が殺気と入り混じり要を襲った
「(この感じはまるで本気の誠一……)」
薄れていく意識のなか要が呟いた
「まるで『鬼神』……」