がくにん 3
何故、そんな事をするかと言うと、忍者というのをバレない様にする為(掟ではないが、バレた時騒がれるのが面倒なだけ)、普通に学校生活を送りたい為(が、今は理事長の話し(遊び)相手になっているが)、理事長や実家で何かしらの依頼があった場合、抜け出し易い為、などがあげられる。
そんなこんなで友達とかは殆どいない(友人が理事長)が、本人からすれば結構充実したスクールライフらしい。
それから、授業が始まり、特に代わり映えのない授業が始まり、特になんて事のない時間が過ぎて言った。
そして、昼休み。
4限目終了のチャイムが鳴る。
(さて、昼休みか……理事長の所に行くか)
そう思って影介が立ち上がるとそこにすぐ側から声を掛けられた。
「あの、宗像君……お昼、用があるかな?」
む、男からの邪気の篭った視線が痛い……
「……すいません。これから少々用があるので。何かあるのでしたら放課後に聞きます」
「あ、そうなんだ……ゴメンね。そんなに用って程の用じゃなかったから気にしないでね」
「すいません。お詫びと言ってはなんですが、放課後時間いただけますか?
一緒に話ながら帰りませんか?」
「あ、はい。分かりました。放課後ですね」
「はい。では、僕、用事があるのでまた後ほど」
影介はそう言い残し、教室を出て行った。
教室を出た影介は、足早に理事長室に向かって歩き出した。
理事長室前に辿り着くと、影介は理事長室のドアをノックした。
「は〜い、どなた?」
理事長室の中から女性の声が聞こえてきた。
「……宗像影介です」
「そう、鍵は掛かってないから、そのまま入ってきて大丈夫よ」
「はい、失礼します」
影介が理事長室のドアを空けると、ノンフレームの眼鏡を掛けた秘書と思わせる風貌の美人の女性が、ソファーに腰掛けていた。
そう、この女性こそ、20代という異例の若さで理事長の椅子に座る才媛、愛染恵理である。
「いらっしゃい影介君、そっちのソファーに座って」
理事長に促され、理事長の対面のソファーに座る。
「それで、理事……恵理さん、用って何です?また遊び相手ですか?まだ、昼飯すら取ってないんですが……」
影介が名前で呼んでいるが、二人でいる時は名前で呼んで欲しいと理事長たっての願いである。