香港国際学園 162
「陸軍刀機。私は戦いが好きなわけではない。投降するなら認めよう」出雲の問いかけに投降の答えは
「……」
だった。
出雲は何も言わずに何かを投げる。ジャラジャラと石畳の上で弾けるそれは、チェスの駒だった。
そして出雲は口の中で何かを唱える。すると抽象的で小さなチェスの駒は、幾分人間らしい形をした人間サイズの物体になった。ポーンの駒は兵士らしく、ナイトの駒は騎士らしい形に変化する。ちなみに色は元の駒同様、白い。そして元の駒同様、意志はまるでないようだ。所詮、駒は駒と言うことなのか。
「もう一度言おう。投降を認める」「……」
出雲は無言で手を振った。
ポーンが三体刀機に飛びかかる。
「ふん!」
刀機は腕に大剣を作り出し、薙ぐ。しかし三体のポーンは絶妙のタイミングでそれをかわす。
「…にわか仕込みの兵卒では、ないようだな」
「無論!」
出雲はそう言ってバスタードソードを抜く。
「キングのレベルが高ければ、ポーンのレベルも高まるのも道理だろう?」
言い終わると同時に、バスタードソードを右に三回、くるくる回す。
一体のクイーン、二体のビショップ・ルーク・ナイト、八体のポーンが、出雲の周りで布陣を布き始めた。
どういう布陣かは刀機には読めないが、負ける気はしなかった。
「ふふ…私の前に頭を垂れれば手を貸しますよ?刀機」「ふん…戯れ言を…試練とやらにそなえてのウォーミングアップ程度には丁度いい…貴様は手を出すな…」
「その奢りが命取りになるのですよ…陸童刀機!」その言葉とともに兵士の駒が三体襲いかかる…刀機は一体に狙いを定め、腹の部分に掌拳をくらわせ、素早く後ろに回り込むと蹴りを喰らわせる…次の瞬間には、兵士の胴は砕け散る…発気と合気の応用技術である「ほう、気孔みたいなもんかなあ?荒削りだけどやるねえ」みことは刀機の戦いを楽しそうに眺めている…その間にも刀機は右腕を巨大な剣に具現化させ、二体目の兵士を貫く…