先祖がえり 44
そう言われた加奈は狐太郎の元へ行き
「・・・ご主人様、失礼します。」
そう言って寝ている狐太郎をキュッと抱きしめた。
すると
「!! あ、ああぁ・・・ご主人様ぁ・・・」
加奈の目がどんどん優しくなり、まるで我が子をあやす母親のようになる・・・
「ご主人しゃまぁ・・・可愛い・・・」
そう言って抱いていると
「うぅぅ〜〜〜〜〜!!」
「むむむぅ〜〜〜〜〜〜!!」
後ろの方で唸り声が聞こえた。
加奈が狐太郎を抱いたままそちらの方へ向き直ると
「へ?留美様?美咲さん?」
そこには明らかに焼きもちをやいている二人の姿があった。
「そう。狐太郎は孤独を不安に思うあまりにお前たちの心を動かした・・・
それは『狐太郎のことを誰よりも愛するようになる』ものと『自分以外のものが狐太郎を相手しているのを見ると嫉妬してしまう』ものじゃ・・・」
源之助のその言葉が終わると同時に
「か、加奈ちゃん・・・私にもコタちゃんを抱かせなさい・・・」
「加奈様・・・独り占めはずるいです・・・」
そう言って近づいてくる二人。
「だ、ダメですぅ!ご主人様は私のご主人様なんですぅ!」
しかし加奈は二人に狐太郎を盗られると思ったのかギュッと狐太郎を抱きしめる。
「こらこら、お前たち。少しは落ち着かんか。」
源之助の声にハッとした3人は慌てて元の位置に戻る。
「やれやれ・・・わしの話はまだ終わっておらんのに・・・では、話を続けるぞ?」
そういって呆れた顔をした源之助は話を続けた。
「さて、お前たちをこのようにした狐太郎・・・お前たちは嫌いになったか?」
その源之助の質問に3人はそろって首を横に振り
「そんなことあるはずがありません!!例えこの世がどうなっても私はコタちゃんのことをずっと、ずぅ〜〜〜〜〜っと愛しています!!」
「そうです!!ご主人様のことを嫌いになるだなんて絶対にあり得ません!!」
「わ、私も狐太郎様のことを誰にも負けないくらい愛しております!!嫌いになるだなんて、そんな!!」
各々が自分の心を正直に述べる。
「だろうな。お前たちは狐太郎のことを溺愛しておる。だから狐太郎もお前たちを選んだんじゃろう。」
そういって源之助は狐太郎の方をチラリと見た。
「・・・では、『今後も狐太郎が暴走するかもしれない』としたら?」
そう言って3人の方を試すような目つきで見る源之助。
しかし3人を代表して留美は
「それでもです。コタちゃんはコタちゃんにかわりありません。」
そういってしっかりとした目で源之助を見つめ返す。
「そうか。それを聞いて安心した。よし!本社の方でも狐太郎の生活を円滑に進めるように手助けしよう!!留美!お前が狐太郎の生活の総監督にあたれ。加奈、美咲。留美の言葉はわしの言葉じゃ。よいな?」
「「「はいっ!!」」」
しっかりとした意思をもって返事をする3人。
「よし!留美よ、何かあったらすぐ連絡を入れるんじゃぞ。出来る限りのことをしよう。」
「はい、ありがとうございます!お爺様!」
「うむ。それで・・・じゃ。」
「? まだなにか?」
まだ話があるらしい。源之助はそのまま口を開いた。
「狐太郎の暴走じゃが、治めることは出来る。」
「え?!本当ですか?!」
「ああ。暴走を治すどころか暴走そのものを食い止めることが出来るだろう。」
3人にとっては願ったりかなったりである。もう狐太郎が苦しむ姿を見たくない。
「そ、それでその方法は?!」
留美が身を乗り出して質問する。
「・・・それは、母性で狐太郎を安心させることじゃ」
「・・・といいますと?」
源之助の言葉がいまいち理解できない留美はその真意を聞こうとする。
「・・・留美は母性の象徴と言えば何を思い浮かべる?」
質問を質問で返す源之助だが、留美はその源之助の質問の答えを考える。
「・・・これ、でしょうか。」
そういって自らのまた一段と大きくなった胸に手を当てる。
「その通りじゃ。つまり、狐太郎に母乳を与えてやればいい。そうすれば狐太郎も安心するじゃろう。」
「な、なるほど・・・」
納得する留美。
「そのためにお前たちの胸もパンパンに張っておるみたいだからな。思う存分狐太郎の世話をして、愛して、尽くすのじゃ。」
「・・・はい!!」
留美の元気のいい返事を聞いた源之助は初めて険しい顔から笑顔に戻る。
その時
「・・・源之助様、御三方のお召し物が出来上がったようでございます。」
扉が開かれ女性が源之助に報告する。