BLUE☆EYES 30
スプーンを持ったまま、目の前のパフェを見ていた。
そうだ、たしか僕は、数美さん呼び出されてトイレの方に行ったんだ。
だけど――そう、数美さんは急に体調が悪くなり早退するって連絡がきたから……
すぐに引き返してきたんだ。
「なにお姉ちゃん、ボケっとしているの?せっかくのおかわりパフェだよ。ねぇねぇ
このケーキも美味しいよね」
「う、うん」
本当にどうしちゃったんだろう。僕は再びパフェを食べ始めた。
*******
メイド喫茶『フェアリー☆パラダイス』を出た僕と凛は、駅前の広場まで来た。
とりあえず話題の映画でも観ようと、近くの映画館を探しているといかにも軽薄そうな感じの男に
声をかけられた。
「ねえ、ねぇ、彼女達。もし暇だったら今から一緒に食事しない?」
どうやらナンパのようだ。今は女とはいえ、兄妹二人連れに声をかけてくるとはいい度胸
だよな。無視して僕は男の横を通り過ぎようとしたのだが……
「ほえぇ。キミって、すげえ美人じゃん。そんなに冷たくしなくていいじゃんかよ。この近くにいい店があるんだ。ね、行ってみようよ」
と……男は僕の肩に手をかけ耳元で囁いたではないか。
びっくりして僕は男の手を勢いよく払いのけると男は「ちぇっ、ばーか」と言いながら離れていった。
まったく…男ってやつは…
「おうおう。やっぱお姉ちゃんってモテるなぁ。いい男が放っておかないもん」
「僕は嬉しくないよ。まったく…下心見え見えだし」
「あはは……でも食事を奢ってもらえるじゃん。羨ましい〜」
凛…お前、そんな事を考えていたの?
そんなはしたない事は、お兄ちゃんが許しませんよ…ていうか、さっきから僕に肘を当てるなよ。
その後、僕は何人もの男からナンパされたり、雑誌のモデル勧誘や事務所のスカウトもされた。
馴れ馴れしく来る男は無視したり、体を触られたら大声で騒いだり。そのたびに自分が魅力的
な女性である事を自覚するんだけど…何か複雑だよ。
「お姉ちゃん、あれなんかどうかな?」
「え!?どれどれ…」
凛の指を差す方向にあったのは、駅前のシネコンにある話題の映画だった。
ふうん、恋愛物かぁ。そういえば、あれってテレビでもかなり話題になったやつだよな。
「そうだね。あれにしてみるか」
「わぁい。じゃぁお姉ちゃん、私がチケットを買ってくるからここで待っていてよ」
そう言って凛はすたすたとチケット売り場に行く。僕は離れた所で待っているんだけど…
「け、けっこう人が多いんだな……わわっ!」