ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 487
「そうしましょうかね…杏ちゃんにも、しばらく会っていないですし…」
香澄は柔らかく微笑むと、枕元のスマホに手を伸ばした。
杏ちゃんは、この前は和彦さんと海外出張に行っていて会えなかったっけ…
そう思うと、久しぶりに会いたい気持ちも強くなる。
そういえば…
「和彦さんはいるのかな?…」
「どうでしょう?…匠さんが会いたいと言えば、きっといてくれると思いますけど…」
「それは悪いよ…住む家のことは別の機会に話しするから、余計なこと言わないでいいよ。」
「分かりました。お父様には会えればということでいいですね…」
香澄はまだ寝ぼけ眼ながらゆっくりと身体を起こし、着替えようとベッドから出る。
「大丈夫か?」
「これくらい平気ですよ。日常の生活は普通に出来るんですから」
大切な人がこのような状態なのは初めてのことなので、つい過保護になってしまう。
「連絡がつきました。杏ちゃんが迎えに来てくれます」
「それはよかった…朝ごはんは家で食べる?それとも、むこうにする?」
「お母さんの作った朝ごはんに決まってますよ!それゃあ弥生さんの作ったご飯も美味しいですけど、お母さんの作る料理は世界一ですもの…」
嬉しいこと言ってくれるじゃないの…
お袋が聞いたら、泣いて喜ぶよね。
…そんなお袋の作ってくれた朝食を食べた後、家の前に真っ白なサルーンがやってきた。
ってか、車変えたのか。
「お久しぶりです、匠さん、お嬢様!」
「杏さんこそ久しぶり。あまり変わらないね」
「もうこの歳になると、あまり変わるものもないですよ…お嬢様はだいぶお変わりになられてますけど」