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華が香るとき〜外伝〜
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華が香るとき〜外伝〜 8

木之花グループが彼の会社と取引する。それは木之花グループに年間100億もの利益をもたらすので、決して簡単に取引を白紙に出来る様な相手ではないのだ。
桜はそんな相手との取引を白紙にして契約文書を破ると、急に思い出した様に腕時計を見る。
そこには「洋介 15歳 175日 23時間55分47秒」のデシタル表示があり、桜はその表示を見てかなり焦り出す。
そしてデスクにある電話を急いで取り、秘書室に電話をかけるのである。
「今すぐ菫とオンラインで話せる様にしなさい!」
桜は電話を切ると、壁に据え付けられている大型のモニターの前に座る。
「菫にはまだ繋がらないの!?」
桜は貧乏揺すりを始めて、明らかに苛々としている様だ。
「あの…木之花さん…私は…」
取り残された社長は恐る恐る桜に伺いを立てる。
バンッ!!
「煩いっ!今この世で一番大事な事をしているの!黙っていなさい!!」
桜は机を叩き社長を威嚇する。社長は桜の行動をただ側で見るしか出来なくなった。

ブーン…
約一分後、目の前のモニターに菫が現れる。
「菫、今どこなの?」
菫の後ろには何やら巨大な額縁が壁に張り付けられている。
「それはロンドンの洋ちゃんね。菫、私が連絡した理由、勿論分かるでしょ?」
桜は額縁を見て安心した様で、心を落ち着かせソファーに深く腰掛ける。
「ええ、これでしょ?今日は私が作ったの」
菫の手には一本の薔薇の造花が握られていた。
「後3分よ。飲み物の準備は?」
桜は再び立ち上がり、棚から高級そうなワインを出すとグラスにワインを注ぐ。
菫は横にいるメイドからワインを注がれている様だ。
額縁には5653本の造花が刺されてある。
薔薇や桜、菫…様々な美しい造花が幼い洋介の写真の周りを埋め尽していた。
後1分後、また一輪の造花が増える。
「誕生日」とは本来毎年一度祝うものだが、二人の「洋介誕生日」は毎日なのだ。
それは産まれた時刻であり、一秒たりとも早かったり遅かったりしてはいけないのだ。
「いよいよね…」
「ええ…」
桜と菫はお互いの腕時計を見つめる。
23時間59分57秒…58秒…59…
そして表示が15歳176日00時間00分00秒になった瞬間、菫は薔薇の造花を額縁に刺した。
「桜…おめでとう。今、洋介さんも15歳と176日になったのよ。洋介さんももう立派な大人よ。後は全財力を使ってでも洋介さんを見付けるだけね」
「うん、洋ちゃんの立派な姿が目に浮かぶわ。早く本物の洋ちゃんに会わないとね」
二人の目には洋介が(妄想の中で)立派に育ってくれた事の嬉しさの涙と、洋介に会えない寂しさ、悲しさ、切なさの涙が入り混じって流れていた。
因みにこの光景は毎日の事であり、言うセリフも日にちが違うだけで全く同じなのだが、二人は飽きもせず毎日のこの時間はこれを繰り返している。

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