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華が香るとき〜外伝〜
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華が香るとき〜外伝〜 43

「分かった。なんか俺達だけ悪いね」
「できれば父さんも一緒に泊まりたいところなんだがな。生憎父さんには、男としてやらなければいけないことがあるのだ!」
急に胸を張り、天を仰いで宣言する洋介父。
「分かってるって。仕事だろ? いちいち大袈裟なんだよ」
「いや違う。世界イイカゲン王決定戦のタイトル防衛マッチを控えているんだ。秘密の場所で特訓をしてくる」
「え!? 会社どうすんだよ!」
驚いた洋介が聞き返すと、洋介父は平然と言った。
「身内に不幸があったことにして休暇を取った。もし会社からお前に連絡が来たら、ちゃんと口裏を合わせるんだぞ」
「いやいや、それだけじゃ無理だろ。少なくとも誰が死んだことにするのか決めないと、口裏合わせられないって」
「では洋介、貝丞君、しばしの別れだ!」
そう言うと、洋介父は洋介のツッコミに答えることなく、1人車に乗り込んでドアを閉めてしまった。彼にとって、世界イイカゲン王のタイトルマッチはすでに始まっているのに違いなかった。
爆音を響かせ、車は走り去っていく。見つかるところに見つかれば、間違いなく違反切符を切られるであろうスピードであった。
「あんな親父でも、社会に出て給料もらえてるんだよな……」
車の後姿を見送り、洋介はしみじみとぼやいた。貝丞は、
「敵わねえよ、洋介の親父さんには……」
とつぶやいた。

そのまま立っていても仕方がないので、2人はホテルに入ってチェックインの手続きをしようとした。フロントにたどり着くと、欧州系と思われる外国人の老紳士が何かの手続きをしているところであった。
2人は後ろに立って順番を待っていたが、老紳士の手続きはなかなか終わらなかった。老紳士は英語と片言の日本語で要件を伝えようとしていたが、ホテルのフロント係が英語が不得手なようで、なかなか会話が進まないのである。

(終わるまで、トイレでオナニーして待っていようか?)

洋介はそう思ったが、気の短い貝丞は早くもシビレを切らしたらしく、無遠慮にもしゃしゃり出ると、老紳士に何事か、洋介の知らない言語で話し始めた。

「…………ky,Nu…………」

すると、老紳士は貝丞の話す言葉が分かったらしく、何か受け答えをし始めた。

「Ce……Do……」
「このホテルは初めてだそうで、宿泊費の支払い方法について確認したいそうです」

貝丞はフロント係に、老紳士の要件を伝えた。その後も貝丞が通訳を務め、老紳士は無事にチェックインを終えた。ようやくのことで洋介は前に進み、名前を告げる。

「2名で予約していました、中村と言います」
「中村様……ですか。少々お待ちください。う〜ん……」

フロント係は困惑の表情になり、何やら書類を漁り始めた。


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