(続)格好が・・・ 51
「そろそろ失礼します」
夕食を終え、彩奈は帰宅することにした。すると瑞穂も、身を寄せている麗美の家に戻ると言った。
「じゃあ、2人とも送って行くわ。外はもう暗いし」
彩奈と瑞穂は真澄の運転する車に乗って帰宅した。
帰宅した彩奈は自室に入ると、今日、自分が描いた絵を見つめながら、描き終えた直後の事を思い起こす。
尖った様に盛り上がった卓也の股間を見て激しく動揺し、更に、全裸で迫って来る宏が想像に浮かび、僅かとはいえ自身の股間を濡らしてしまった。
「こんなことで、ちゃんと完全なヌードの男子を描けるのかな?」
絵の中の卓也の姿を見つめながら彩奈が悩んでいると、
「入るわよ」
「お姉ちゃん!」
優奈が部屋に入って来た。
「これが彩奈の描いたタッくんね!」
絵をじっくりと見る優奈。
「ねえ。一緒に遊園地に行かない?」
優奈が話すには、“子どもの日”の5月5日、郊外の遊園地でホワイトスパークの野外コンサートが行われるので、一緒に見に行かないかとのことだ。
翌4月30日の昼、卓也と瑞穂、麗美と光平、2組のカップルが喫茶“トキメキ”に入り、向かい合って座った。
「いらっしゃい。待ってたわよ」
雪乃が4人を出迎える。麗美が予め伝えていたのである。
「瑞穂さんに卓也くん、よろしくね」
以前、瑞穂と卓也は学校帰りにこの店に入っているが、雪乃とはこの時が初対面だった。
「あの絵のモデルの人ですね。やっぱり奇麗な人だな!」
卓也は雪乃の顔を見ながら言うと、壁に飾られている『白き天使』の方へ顔を向けた。
「フフ…どうもありがとうね!」
雪乃は満面の笑みを卓也に見せた。
卓也と光平はこの日が初対面だった。
「君が、元ホワイトスパークのタッくんなんだね…」
光平は卓也の顔を改めて眺めた。
「うん、見たことある顔。やっぱりかっこいいな」
「いえ、光平さんもかっこいいですよ」
「どっちもカッコいいけど、私にとってはタク坊が最高よ」
卓也の隣に座る瑞穂が言うと、
「そうね!私だってコーくんが一番よ」
光平の隣の席の麗美も言った。4人は一斉に笑う。
「ねえ卓也くん。昨日、優奈の妹に頼まれて、絵のモデルを引き受けたのよね」
「え、ええ…」
麗美の問いにうなずく卓也。
「瑞穂ちゃん、スマホに撮った卓也くんの絵、見せてみて」
「うん」
瑞穂は自身のスマホを出し、撮影した写真を画面に表示すると、それを麗美と光平に見せた。それは、白いビキニパンツスタイルの卓也を描いた絵を瑞穂が撮影したものだった。
「卓也くん、なかなかカッコよく描かれてるじゃない!」
麗美は昨夜、この写真を瑞穂に見せてもらっていた。
「タク坊ね、初め、ヌードを描かせて欲しいって頼まれたんだって」
瑞穂は写真を示しながら言った。
瑞穂は続ける。
「そうなんだけどね、ヌードは、大事な人にだけ、見せる、みたいなこと言ってくれて、断ってくれたんだ」
「え、あ、それ、ここで言っちゃう?!」
「いいじゃん、ほんとのことなんでしょ」