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華が香るとき〜外伝〜
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華が香るとき〜外伝〜 38

洋介は狐につままれた心境になったが、父があまりに自信たっぷりなので、ひとまず大人しく受け取ることにする。
「……それじゃ福名に、渡すだけ渡すよ」
「それでいい。いやあ、父さんはなんて息子想いなんだろうなあ! おいおい、そんなにお礼を言われたら照れるじゃないか……」
「まだ何も言ってねえ!」
洋介は憤然と立ち上がり、回れ右して自室に引き上げた。

翌日の朝早く、福名のクラスを訪れた洋介は、彼に例の紙を手渡した。
「これ、どこの電話番号なんですか?」
「それが俺にも……でも、ここに電話すると、部活に来られるようになるっぽいんです」
「はあ、まあ、それじゃ電話してみます」
明らかに半信半疑の様子だったが、福名は紙を受け取った。洋介は福名のクラスを後にすると、その足で貝丞のクラスを訪れて事情を話す。少し話し合った結果、「それじゃ様子を見るか」ということになった。
放課後、洋介と貝丞は部室に行かずまっすぐ下校した。もはや勧誘を行う必要はなく、その他の準備もあらかた終っていたからである。帰宅した洋介は、取りあえずただいまの一発を抜く。
「ふはっ……」
床に座り込んで余韻に浸っていると、携帯電話が鳴り出した。
RRRR……
「ん? 誰だ……?」
立ち上がって発信元を見てみると、福名であった。昨日の入部手続きのときに、連絡先を交換し合っていたのである。
「もしもし……中村ですが……」
『あ、もしもし、初雪です』
通話ボタンを押して名前を告げた洋介の耳に、福名の声が聞こえた。何となくだが、嬉しそうな響きである。
『実は今日の放課後、もらった電話番号に連絡してみたんです』
「あ……それで、どうなりました?」
『名前を名乗ったらすぐ来てほしいって言われて……言われた場所に行ってみたら、バイトの募集だったんです』
「へ……?」
福名の言葉を聞き、洋介は軽くない驚きを覚えた。あのイイカゲン親父、福名の働き口を見つけてくれたとでも言うのか。
『保証人ももういるから必要ないって言われて、明日から働けることになったんです。バイト料が出れば、部活に参加できますよ』
「そ、そうですか……それはよかったです」
嬉しさ半分、意外さ半分だった。それから洋介は福名と二言三言言葉を交わし、通話が終わる。
電話を切った洋介は、携帯電話を置き、部屋の中央に胡坐をかくと、そっと眼を閉じた。
(あの親父ああ見えて、やるときは案外やってくれるんだな。後で、お礼の1つも言っとくか……)
やがて玄関のドアが開く音がした。父が帰宅したようだ。全裸だった洋介は、シャツとズボンを身にまとって出迎える。
「お帰り父さん。あの……」
「ただいま洋介。どうした?」
「あの……ありがとう。福名のこと……」
「ワッハッハ! なあに、父さんにとってはどうってことないさ! お礼はそうだな……洋介の愛のこもったキスでいいぞ!」

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