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華が香るとき〜外伝〜
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華が香るとき〜外伝〜 32

「同感だな。これ以上ないぐらい普通の高校生である俺も、世間一般とはちょっと違う、斬新な発想をする人間が不可欠だと思っていた。もっとも、発想だけで行動力がないのは困るが……」
「全くだ」
二人の会話は微妙に噛み合っておらず、かつその内容は事実から大幅にかけ離れていたが、結論は一致していた。この学校でトップクラスの変わり者の中から、必要十分なバイタリティを持った人間を探すことになったのである。
「どうやって探す? 手分けして聞き込みでもしてみるか?」
「ああ。それがいいだろう」
洋介の提案に、貝丞が賛意を示す。二人は簡単な打ち合わせを済ませてから、二手に分かれようとした。だがそのとき、どこからか異様な声が響く。
「さあさあお立会い!」
(ん? 何だ?)
洋介は思わず振り返った。貝丞もまた足を止め、声のした方に視線を向けている。どうやら校舎裏の方で、誰かが声を張り上げたようだ。
「貝丞、今のは……」
「分からん。行ってみるか?」
「ああ」
あまり期待はできないが、もしかしたら目当ての人間に出会えるかも知れない。そう思った洋介は、貝丞と共に校舎裏に回ってみることにした。
「四六のガマだ。四六のガマ。四六・五六はどこで分かる。前足の指が四本、後足の指が……」
二人が校舎裏に行ってみると、一人の男子生徒が仁王立ちになって口上を述べていた。身長は貝丞より少し高いぐらいだろうか。制服の上着(月倫高校は学ランである。)を傍らに脱ぎ捨てており、半袖のワイシャツ。右手には小さな貝殻、左手には“ガマの油”と書かれた幟(のぼり)を持っていた。
「今時ガマの油売りかよ……」
洋介は呆れた。隠し芸の練習か何か知らないが、少しネタが古すぎる。
もう行こうぜ。洋介は貝丞にそう言おうとした。だがそれよりも早く、もう一人の男子生徒がその場に現れる。髪を染め、制服を着崩した不良らしいその男は、喧嘩でもしたのか顔が傷だらけである。
「痛ててて……」
男は洋介達には目もくれず、真っ直ぐガマ少年に近づく。
「一つくれ」
そして掌に何かを乗せて突き出した。どうやら小銭のようだ。
「おありがとうござい……」
ガマ少年はぺこりと頭を下げると、幟を置いて小銭を受け取り、貝殻を差し出す。男はそれを手にし、足早にどこかへと消えていった。
「…………」
まさか、隠し芸の練習でなく本当に薬を売っているのか。それなら単なる目立ちたがり屋を超えた、本当の変わり者かも知れない。洋介がそう思っていると、同じように感じたらしい貝丞が話しかけてきた。
「あの人、当たってみるか?」
「ああ。行ってみよう」
一も二もなく、洋介は答える。二人はガマ少年にアプローチすべく、彼の方へと向かっていった。
「ちょっとお時間いいですか?」
まず貝丞が口火を切り、ガマ少年に話しかけた。すると向こうはキッと目を剥き、こんな文句を口にする。

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