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華が香るとき〜外伝〜
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華が香るとき〜外伝〜 4

「洋介よ、今日は友達とどこへ行くつもりだったんだ?」
父は友達より自分を選んでくれた事自体は嬉しいが、今まで転職・転勤続きで洋介には友達が少ないので、友達を大切にして欲しいという気持ちもあった。
「大した事ないよ。第一回チキチキ麻雀大会ってやつに誘われただけだから。俺さ、麻雀出来ないしね。父さんとの時間の方が大切だから」
くどい様だが、洋介は「エロ本」を取った訳ではなく、「父」を取ったと言いたいのだ。
 
しばらく二人は他愛の無い話をして本屋へ向かって歩いていた。
ところがある場所へ来ると、父が突然頭を抱えてしゃがみこんでしまう。
「うぐ…ううぅ…」
「父さんどうしんだ?大丈夫!?」
洋介が突然しゃがみ込んだ父の前に行き、心配そうに父の顔を見ると、冷や汗をダラダラと流していた。
「洋介よ…父さんはもうダメだ。父さんの事はいいから、お前だけで行ってくれ…」
父は目をシバシバと瞬きをして、苦しそうにしている。
「父さんはもうダメだ」と言われて心配にならない息子がいるだろうか。
「父さんしっかりして!どこが苦しいんだ!?…あっ、救急車を呼んでくるからこのままじっとしてて。大丈夫、病院に行ったらすぐに良くなるから!!」
洋介は父の苦しみが段々激しくなっていくのを見て、救急車を呼びに行こうと近くにあった公衆電話の方へ行こうとする。
「洋介よいいんだ…お願いだから救急車は呼ばないでくれ…」
父が洋介を行かせまいと洋介の腕を掴み阻止するが、勝手に切羽詰ってしまった洋介はもうどうしたらいいのか分からなくなってしまう。
「分かった、分かったから…じゃあ、家に帰ろう。俺が負ぶってあげるから、父さんは俺の背中に捕まって」
「洋介…お前にこれをやるから父さんの事は気にせず本屋へ行くのだ。お前の使命は本屋へ行く事…父さんの事を気にしてたら、お前が廃ってしまうぞ。父さんはこれから行く所があるから、気にせずに行って来い!」
洋介は猫の小銭入れを渡され、しかも父が行く所があると聞いてピンときた。
「父さん…もしかして…」
「ああ、父さんはパチンコへ行って来るから。パチンコが父さんを呼んでいる…せっかく呼んでくれてるのに行かなかったら父さんの「漢」が廃るのだ!洋介よ、お前にはお前の使命がある。それと同じで父さんには父さんの使命があるのだ。じゃあな、気をつけて行け我が息子よ!!」
洋介の父は偉そうに洋介に言うと、先程の苦しそうな表情はどこへいったのか、新幹線より早いのではないかという勢いで目の前にあるパチンコ屋へ向かった。

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