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檻の中
【熟女/人妻 官能小説】

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第5章-1

倶楽部イベント当日、沙良は早めの簡単な食事を取ると、会場となる六本木のマンションに向った。
梅雨空のどんよりした鈍色が沙良の気持ちを代弁しているかのようだ。
入室するなりアシスタントと思しき女性がIDを確認すると、符合する仮面を手渡していく。フィッティングルームには参加者のID番号が記されており、そこで着衣を全て脱ぐ。
フィッティングルームナンバーと同一のロッカーに荷物を預けると、仮面のICチップで施錠する仕組みになっている。相当お金の掛けていることが良く判る。
沙良も全裸になり仮面を着けて会場に向った。
1フロアぶち抜きに改装された会場は体育館並みの広さがあった。一段高くなっているところに黒い革張りのベッドと揃いの腰高な椅子が置かれており、そこにのみダウンライトが灯され、会場全体は暗かった。“スタープレイヤー”とサイトで紹介されていた結城真が既にステージ端のソファに腰かけ長い脚を組んで煙草を吸っていた。写真で見るより格段に美形だった。
参加会員の大半が会場に来たと報告を受けた結城は、すっくとソファから立ち上がり、マイクを持ってパーティを開始した。
『当会SM倶楽部イベントにようこそお越しくださいました!今夜は皆さまの欲望を思い切り開放して思う存分お楽しみください。私が今回のイベント運行をさせて頂きます結城真と申します』そう言って深々と一礼する。しばし間があってぐいっと体を元に戻すと『さぁ!まずはプログラムの筆頭、当倶楽部名物の緊縛プレイにご参加くださる女性はおられませんか?』そう言ってスポットの当たったステージから結城が、暗い場内に居並ぶ数十人の男女を見渡した。
その緊縛師は、黒のタンクトップにスリムなブラックデニムにウェスタン調のショートブーツというカジュアルな出で立ち。短く刈られた黒髪はジェルで撫で付けられている。
顔の上半分を隠す仮面をつけた全裸の男女がざわめく。結城はしばらく彼らの反応を観察すると、あろうことか『では…、そこの貴女、いかがですか?』と沙良を指さした。
『え…』
均整の取れた白い肢体、仮面をしていてもその美しさが窺い知れる彼女はその場の会員たちの中で最適格者だと、彼は判断したのだった。
“何もせずに観察だけしてこっそり帰ってくる。何か手掛かりが掴めれば…”…その程度の気持ちで参加した沙良には予想だにしない展開で、さすがに動転せずにはいられなかった。
『さっ、どうぞどうぞこちらに!』沙良の頭上にはスポットが当たると、もう逃げることは出来ないと覚悟するしかなくなっていた。そもそも参加した会員は、ここで乱交すら期待している性嗜好の持ち主ばかりなのだ。ここで『いえ結構です』などと言えば、身元を疑われこそすれ、『はぁ、そうですか』と納得してもらえるはずもない。
沙良は周囲の注視する中、意を決しておずおずと前に進んで行った。


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