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檻の中
【熟女/人妻 官能小説】

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第1章-1

―島崎 沙良様、ご入会まことに有難うございます―

全てはこの一通のメールから始まった。
自分が【キングダム】というアダルトサイトに会員登録したという自動確認メールだった。
内容を読んで驚愕した。
そこには、『動画投稿の手引き』とあり、自分が投稿者登録をしたことになっていた。確認メールに記載されていたパスワードを当のサイトに入力してみると、『マイアカウントページ』には、自分の口座まで違いなく入力されている。
次の新着メールには更に驚愕した。
―新規ご投稿、誠にありがとうございます―
え…。
自分が、投稿…?
震える手で『確認ページ』に飛ぶと、いきなり沙良と夫である紘一郎が結婚式当夜に泊まったT国ホテルのスイートでのセックス動画が始まった。
画像の二人の顔のみうっすらモザイクが掛けられ、それ以外は局部すら顕になっている。
紘一郎は自分の上にしゃがんで跨った沙良の両膝を掴んで思い切り開くと『ほら、俺のを咥えてるところがよく見えるように開け』と命じた。
『んっんっんっ…んああ…っ』
蛙のような格好で、それでも快を貪ろうと必死で腰を上下させる無様な自分…。顔から火を噴きそうだ。
画像は巧妙に二人の接合部にフォーカスが当てられている…。こんな昔の画像が…一体どうやって…。アングルからしてベッドサイドのどこかにカメラは据えられていたのか…。
だが、すぐさま画像は天井からのものに切り替わった。
カメラは一台だけではなかった…?
紘一郎は腹筋の力でぐっと上体を起こすと沙良を押し倒した。そして沙良の頭に回って自分の怒張をその口に加えさせてから、沙良の首もとを支点にして局部が天井を向くよう沙良の尻を持ち上げた。中まで見えろとばかり沙良の肉襞は紘一郎の両手で思い切り広げられた。
カメラは沙良の無毛の局部を中心に捉えてズームされている。そこは愛液にぬらぬらと光ってひくついていた。
男女の関係になってから間もなく、沙良は紘一郎に『君には似合わない』と言われ、局部を永久脱毛させられたのだ。
同時に、その頃から紘一郎は沙良への嗜虐性を少しずつ表すようになっていた。
しばらく無毛の局部を眺めると、紘一郎は沙良の性器に口をあて、太い舌を膣に差し込んだ。そしてゆるゆると中を味わうように抽挿する。
『あ…』
沙良はその中途半端な感覚にもどかしさを覚えながら、その口を紘一郎の屹立に犯されている。時おり喉を突かれ、『ぐっ…ぐふっ…』と、えづいている。
紘一郎は一度口を離すと『ふん、もっと感じたいんだろ。乳首でも弄ってろ』酷薄な笑みを浮かべて冷たくそう言い放つと沙良を焦らして楽しんだ。
だが、その式以来、紘一郎はすっかり沙良を抱かなくなっていた。まるで、まともに抱かれぬ不満に沙良が身悶えるのを楽しむかのように。

いたたまれぬ思いで動画を見終えると、沙良はぐったり脱力した。どうしたらこんなことになるのだろう。誰が…?まさか夫が…?
確かにあの夫ならやりかねない…が、いくら夫が嗜虐性が高いからと言って彼にとってさえこんな投稿に益は無い。
いや、無いどころか、自分の妻がこんなサイトに会員登録し、あまつさえ夫婦のセックス動画を投稿しているなどと言う事が万が一勤め先に知れでもしたら、紘一郎の職場での立場は間違いなく無くなる。
では、一体誰が?どうやって?
沙良は途方に暮れた。

『紘一郎さん、今日は何時?』
油揚げと青葱の味噌汁、鯵の一夜干し、焼き海苔、鱈子、だし巻き卵に手作りのポテトサラダという日本旅館ので出されるような朝食がずらりと並ぶ。これが紘一郎の好みで手抜きは許されない。
沙良は紘一郎にご飯を装った茶碗を手渡しながら夫の予定を訊いた。
その紘一郎の表情に異状はないか、沙良は思わず注視してしまう。
紘一郎は新聞を読みながら『わからん。クライアント次第だ』無表情のまま素っ気無く答えると、新聞を置いて猛然と朝食を掻きこみ始めた。
会話は、それで終わりだ。これ以上何か話しかければ不機嫌な顔を向けられるだけなのだ。

医療機器メーカーに勤める紘一郎とは兄の紹介で知り合った。
“知り合った”と言えば聞こえは良いが、半ば強制的な見合いと言ってよかった。
代々開業医をしている沙良の家は、近隣の大病院や大学病院に押され、決して経営が上手く言っているとは言えなかった。兄の創一が継いだ頃には病院を開いただけ赤字が膨らむ一方の有り様だった。15歳下で医学部に入った妹である沙良の学費の捻出など、至難の業となっていた創一は、自分の医院を担当していた紘一郎が当時明らかに沙良に好意を寄せていることに気づき、交際を持ちかけたのだ。
当時沙良は18、紘一郎は30だった。
苦しい台所事情を十分知っている紘一郎は、沙良の学費を肩代わりする条件を出されてそれを快諾して婚約し、沙良の大学卒業と同時に結婚した。だが医療機器メーカーに勤めている紘一郎の収入だけでは沙良の医学部費用の捻出は到底不可能だった。これは、沙良との結婚を喜ぶ紘一郎の両親が請合ってくれたものだ。
しかも、沙良の家の状況を察して沙良の家に住むことさえ呑んでもらっている。
沙良と紘一郎との力関係はその時点から決定的になったと言って良い。彼に逆らうことは一切赦されない。早い話が金と引き換えの人身御供だ。沙良は自嘲気味にそう思っていた。

『行って来る』紘一郎はそう短く告げて黒いビジネスバッグに読みかけの新聞を突っ込むと、すたすたと玄関に向う。
手を拭きながらその後ろ姿を追うように沙良が付いて行く。
『行ってらっしゃい』
振り返られもせずドアが閉じられると、沙良はほっとため息を吐き、踵を返して台所に戻った。これから同居する沙良の甥、創の朝食を準備するのだ。
沙良の家は紘一郎、創との三人暮らしだが、創と紘一郎の生活サイクルは殆ど合わない。辛うじて週末は双方休みだが、紘一郎は接待ゴルフだなんだと外出がちで二人が顔を合わせることは稀有と言ってよかった。


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