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Odeurs de la pêche <桃の匂い>
【同性愛♀ 官能小説】

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第4章 展開-20

 真夏の日の午後、オレンジ色の日差しが窓外の木々やビルを強いコントラストで空に焼き付けているのをボンヤリと眺めておりました。ビルの陰に憩う2羽の鳩も暑さに倦んでいるようでした。快適な室温の事務所のソファまでが、背中を蒸れさせそうな午後でした。私はマッサージの疲れで、いつものようにソファにころがって浅い眠りに落ちていました。
 律子が合い鍵で入ってきて、治療と称する行為を始めるのを夢の中で意識しておりました。ぶよぶよとした形のない不気味な物体が次第に大きくなって、私の息を塞いでいく夢でした。
 律子は、控えめに私のスカートを捲り、パンティーを下ろし始めたところで、その重苦しい夢の正体が私のパンティーの中にあるものと結びつきました。
「起こしちゃった……? ごめんなさい……」
 エステの続きのように、しばらく私の太股をさすっていた律子の指が、徐々に私の襞の中へ入ってきました。
「リッコ……指なんか入れるの……よして……」
「お姉ちゃん、ちょっと我慢して」
「どうしたの? 急にそんなことして……」
「エステの先生が<自分にはできないから律子さんがしてあげて>って。教えて頂いたの」
「…………」
「お姉ちゃんの中、初めて……熱いわ……この辺感じない……?」
「この辺って?」
「感じないのね。この辺にとても感じるスポットがあるんですって……」
「……いじられているのは分かるけど……気持ちよくないわ」
「ここは……?」
「いやよリッコ……穴の中かき混ぜられているみたいで……いつものようにリッコの舌の方がいいわ……」
「でもお姉ちゃん……もう少しだけ我慢して……私も……お姉ちゃんの穴の中触るの初めてなんだもの……私も我慢しているのよ……もうたまんない……どうしようわたし……」
 ミニョンによって知った身体の奥底を駆けめぐるような官能の刺激は、舌による真珠への刺激と、律子の言う、そのスポットでの指の動きだったのかも知れない……私はただ歓喜していただけだったの?……。私はそれと知らずに、律子をあのめくるめく歓喜へ導いてやれたのが、そのスポットなのかしら? 
 律子の指を体内の奥に感じて、その時の失神してしまうほど歓喜が突然に思い出されました。
「先生は、一度そこのお肉を2本の指で挟むようにして……こうやって試してご覧なさい、絶対よって言われたんだけど……ここもだめなの……? 私が下手なのねきっと……でも、先生にお姉ちゃんのココ、いじって欲しくないし……」
 律子は、半べそをかきながら、私の内部をあれこれ試していましたが、突然、
「お姉ちゃん……お姉ちゃん……少し濡れてきたみたい……あ、また出てきたわ……少し感じるんでしょ? 私、うれしい……」
 指を入れたまま、襞の中に唇が入り、啜り上げる音がしました。
「……お姉ちゃんの蜜……飲んだわ。もっと出てくれないかしら。私……お姉ちゃんのこんなの見たら、我慢できない……私、……私……Ohh……Le miel coule de votre trou est odeur d'une pêche(お姉ちゃんの穴から流れる蜜は桃の匂いするわ)」
 私は、律子のフランス語を初めて聞いたような気がしました。
「リッコ……リッコ……なぜフランス語で?……」
「さっきまで、フランスの化粧品会社の人たちと……私、何言ったかしら?……あ、お姉ちゃん、また出てきたわ。透明で粘った蜜よ……きっと感じているんだわ……お姉ちゃんのココ、いい匂いだと思ってたけど、これが中にあったのね。そうよ、桃の匂いがするのよ。アア……姉ちゃんの匂い、大好き……私、一度行ってもいいでしょ………?」
「……お願い……もう一度フランス語で言って!」
「Ohh……Le miel coule de votre trou est odeur d'une pêcheって?……Ohh……Le miel coule de votre trou est odeur d'une pêche……お姉ちゃんの蜜を舐めながら行けるなんて、私……もうダメ……」
 潤んだ目を泳がせて私をみつめ、今にも果てようとしていた律子は、驚いたように顔を上げ、
「まあ……お姉ちゃん、どうして泣いているの? 感じたの?」
<リッコ、ごめんね……リッコ、ごめんね>
 勘違いしている律子は、私の首に腕を回して抱きしめました。私は、夢の後に来る空しさと共に、現実化してしまったデジャヴュの映像を追いかけているだけでした。少し汗の匂いのする律子の脇の中に顔を埋めて声を潜めて泣きました。きつく閉じた目の中で収まりきらない涙が溢れると、それに反応したかのように、止めどなく。

 「夏の日差し」「odeurs de la pêche……ミニョンの声」そして歓喜の時。
 日々の充実感と律子との営みのなかで、煉獄に等しい孤独を心の奥深くに閉じこめたはずだったのに。
 遠い記憶を呼び覚ますデジャブが目の前に蘇るまでは……

 朝、定刻に迎えの車が来るので、一応は律子と出社はするものの、律子以外、社内の誰とも会いたくなくなりました。律子は敏感にあれ以来の私の変化を感じているようでした。車の中ではずっと私の手を握りしめ、流れる町並みをぼんやりと眺めている私の顔を心配げに見つめているようでした。
 エステも受ける気持ちになれず、律子も私に対するあのお試しをしようとしませんでした。腫れ物にさわるような律子の気遣いに、私は心の中で謝りながら、自分の感情の整理ができなくなっておりました。
 初めて私の流す蜜を飲んで喜んでいたのに、こんな状態になってしまった私に律子はさぞ混乱していたでしょう。律子のことですから、私の流す初めての蜜の匂いを odeur d'une pêche と言ったばかりに、それが私の怒りを買ってしまったのではないかと……<そうじゃないのよ……>と言ってやりたかったのに、それすらも思い浮かばないまま一人きりの世界に閉じこもってしまったのです。


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