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Odeurs de la pêche <桃の匂い>
【同性愛♀ 官能小説】

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第4章 展開-11

 その時のことを思い出したのです。
 新しいパンティーも買えない私と暮らすためには、自分も応分の負担をしなければ……と考えた律子の律儀さは、うれしいというより、律子の感覚と私のそれが全くかけ離れていることにあらためて驚かされたのです。
 高級マンションには暮らしていますが、私には物欲がなく、食事も細かったので、食卓は律子から見れば想像外の質素さに思えたのでしょう。
 衣服の面でも、律子は私の無頓着さを気に掛けていたようでした。食料品や日常品以外、新しい洋服はおろか下着すら買おうとしないことや、<没落貴族>という耳に残った言葉が、彼女なりに私のイメージを作ってしまったのかも知れません。
「リッコありがとう。でもね、どう言えば分かってくれるかしら……誤解しないで聞いてね。翔子はね、とってもお金持ちなの。でも、お金なんて、いまの世の中は無くちゃ困るけど、翔子のように沢山持っているからといって、それが何かを生むかしら。翔子のパンティー見て余りにも古いと思ったんでしょうけど、ここまでくると素肌でいるような履き心地なのよ。翔子のパンティー履いてご覧なさい。分かるから」
「それはそうでしょうけど……」
「リッコは、ビアン風のエロティックな隠微さが欲しいわけ?」
「そんな……違います。私、お姉ちゃんを誤解してたんです……」
「多分そのようね。ご両親に送って頂いたお金は自分のためにとっておきなさい。本当言うと、ご両親に仕送りして頂かなくても、リッコのためなら何から何まで翔子がしてあげたいけど、それじゃご両親が変に思うでしょうしね。その内、アルバイトしてるから、とか何とか言って、少しずつ減らして頂いたらどうかしら。生活費なんてこと考えちゃだめよ。今度リッコにもカード作ってあげるから、なんでも欲しいもの買っていいのよ。翔子はリッコがいればそれでいいんだから」

 律子には、小夜子に打ち明けたように、私の身体の部分的無反応のことは正直に打ち明けておりました。律子は、私の言う<部分的無反応>の意味が良く理解できないようでした。
 律子の反応は、溜め息と共に幸福そのもののように素敵な顔を見せてくれますが、欲望と言う点では淡泊のようでした。何事もなく、ただ普通の会話をし、私の腕の中で眠ることを素直に喜んでいるようでした。
 でも、若い律子にとっては食べる楽しみがあるはずでした。最初の頃、私の小食を気にした律子は<お姉ちゃんはもっと食べなくちゃダメ>と言って、自分でお肉を買ってきて焼いてくれたこともあったのですが、私は、お付き合い程度に少し口にするだけでした。律子の料理全てが味付けされていないように感じられたのです。律子の怪訝そうな顔を見て、私は、味覚にも軽い障害が出てきていることに気付いたのです。一人の時は、ただ生きていくために食べているだけで、味わって食べている感覚ではなかったのです。自分の舌の異常にはっきりと気付いてからは、律子のためにする料理の味付けに慎重になりました。
 私の作るスープの類は、素材の種類や質、栄養のバランスも母譲りで、結構手間ひまかけて作ります。バラエティーも豊かです。チーズやバターが溶け込んでいるスープは、多分、習慣的な味付けでもおいしい筈なので、あまり神経質にならなくてすみます。律子もその都度<おいしい>、と言ってくれますが、プレーンオムレツだの、果物、野菜、ヨーグルト、牛乳、そして少しのパン……若くて田舎育ちの律子にしてみれば、お腹の片隅にほんの少し溜まる程度だったかも知れません。でも、私が律子の作る料理をあまり食べようとしないことや、魚や肉を焼く匂いが部屋に充満するのを気にするのが分かると、自分でも私のレシピを学んで、律子の言う<質素な食事>に甘んじておりました。<リッコは若いんだから、好きな物を食べていいのよ>と言うのですが、<お姉ちゃんと一緒にする>と、私の小食に合わせるようになってしまいました。多分その効果だと考えられます。共に住み始めた頃に比べると速いペースで体重を落としていきました。と同時に、身体から発する匂いが甘みを帯びてきたのです。もともと綺麗な下地がある子ですから、都会的で清楚な女性に変わったのはうれしいことでした。律子自身、鏡を見る度にはしゃぎながら私の食生活を見直してくれたようでした。
「お姉ちゃんに、リッコ綺麗、って言われると本気にしちゃう……」
「嘘じゃなくてよ。リッコは本当に綺麗。何よりもリッコには清潔感があるのがいいわ。この耳の後ろから顎にかけての綺麗さったらないわ」
「アアア……お姉ちゃん……」
「あら、ここが感じるのね? リッコの耳を見ると、いつもリッコを舐めたくなっちゃうの」
「ああン。そんなこと言われると私……」


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