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とある夫婦のカタチ
【若奥さん 官能小説】

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麻生家 草食な夫-2

「いいにおーい。」

リビングに戻ってきた風呂上りの妻は上機嫌だ。

「ビール飲む?」

「うん!京ちゃんも飲むよね?」

キッチンの冷蔵庫へ向かってくる妻を制して、テーブルに自分が持っていく。

「ありがとう!」

妻からのこの一言が聞きたいがために。プルタブをあけ、何もなくても乾杯はする。考え事をしていたせいか、少し火を通しすぎてしまった気はするが、やはり最高の笑顔でおいしいを連発してくれた。

「やっぱり京ちゃんの作ったご飯が一番おいしい。今日ね、職場の人に麻生さんだけは嫁にしたくないって言われたんだよ。」

頬を膨らませる凛ちゃんが小動物に見える。

「なんで?」

「麻生さんのご主人大変そうだから、だって。家事も全部して嫁の弁当まで作ってくれる夫なんてそうそういないよ、って。嫁の弁当どころか、京ちゃん、ゆずのキャラ弁まで作れるもんね。京ちゃんは私の自慢のダンナさんだよ。でもさ、嫁にしたくないってひどくなーい?」

こんなかわいくて働き者の嫁さんも、そうそういないよ、と返せたら凛ちゃんは喜んでくれるだろうけれど、なかなか口に出せない。あいまいに笑うと、会話は次の話題へと移っていく。観てもいないTVでは深夜のドラマでコンビニのおねーちゃんに一目ぼれする冴えない青年が映っていた。

「最近会社のそばにオープンしたコンビニにかわいいおねーちゃんがいるんだよ。かわいくて今時の子っぽいのにすごく感じがいいの。」

「おにーちゃんじゃなくて、おねーちゃんなんだ。凛ちゃん、若いおねーちゃん好きだよね。」

「うん。オッサンみたいって言われた。京ちゃんは若くてかわいいおねーちゃんがいてもあんまり見向きもしないよね。」

「そうかも。おねーちゃんとおばちゃんだったら、おばちゃんのレジに並ぶ。」

「え?もしかして熟女がいいの???」

「違うよ。おばちゃんのほうが基本的に手際がいいでしょ?」

若くてかわいいおねーちゃんなら、毎日凛ちゃんを見れるから外で目の保養をする必要はないのだ。これも恥ずかしくて口が裂けても言えないけれど。

「イケメンなにーちゃんとかわいいおねーちゃんだったら凛ちゃんはどっちに並ぶ?」

「絶対おねーちゃん。若いおにーちゃんに興味ないもん。私は京ちゃんみたいに落ち着いて包容力のあるオトナのオトコがいい。」

うれしいことを言ってくれるじゃないか。ふとTVに視線を送ると、いわゆるラブシーンに変わっていた。オフィスで背後から女性を抱きしめる男。

「久しぶりにうちらもするー?」

凛ちゃんから切り出してくれた。これはチャンスかもしれない。たぶんこの機会を逃したらまたしばらくないだろう。なくても普段なら困らないのだが、ハンバーグを焼いていた時の淫らな妄想がよみがえる。

「しよっか。」

そそくさと食事の後を片付けて、凛ちゃんの寝室へ。結婚当初は同じベッドで眠っていたが、凛ちゃんの仕事が忙しくなってからは自分と娘が同じ部屋で眠り、凛ちゃんだけ別の部屋。来年小学校に上がる娘のゆずは最近与えられた子供部屋で眠るようになった。凛ちゃんとゆずは何から何までそっくりで、寝相の悪さも互角の勝負だ。ゆずのかかと落としを食らわずに済むと思うとほっとするが、父親としてはちょっと寂しかったりもする。


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