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とある夫婦のカタチ
【若奥さん 官能小説】

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麻生家 草食な夫-1

今日も妻の帰りは遅い。それでもふがいない自分に文句一つ言わず朝から晩までバリバリと働いてくれる一回り年下のかわいい妻のために、妻の好物を作り、帰りを待ってしまう。膝の上の愛犬は、母ちゃんの帰りを待ちきれずにいびきをかいている。チビは最近作ってもらった子供部屋で眠ってしまったし、今こそ父ちゃんを独り占めできるチャンスといわんばかりに。もともと大型の犬種ではあるが、今は亡きジジババに甘やかされて育った巨体の彼女を長時間膝の上に乗せているとさすがに足がしびれてくる。そうこうしているうちに、妻の車の音が聞こえる。遠慮がちに開けられるドア。極力音を立てずに靴を脱ぎ、この部屋に近づいてくる気配。

「ただいま。」

今すぐ振り返って愛しい妻の表情を確認したいけれど、気恥ずかしい。そのまま視線はTVに集中している風を装い声をかける。

「おかえり。夕飯、凛の好きなハンバーグ作ったよ。それともお茶漬けのほうがいい?」

お疲れ様、とか気の利いたことが言えない。仕事どう?と聞いたところで相手だって返答に困るだろう。

「んー、カロリーは気になるけど、京ちゃんの作ったハンバーグ食べたい。」

そうだろう、そうだろう。心の中で小さくガッツポーズ。自分が作ったものは、何でも「おいしい」「作ってくれてありがとう」と笑顔で食べてくれる妻だが、その中でもハンバーグの評価は別格だ。確かに日付が変わった頃にハンバーグ、とは美容と健康にはよろしくないかもしれないが、細くてちっちゃい凛ちゃんなら、もう少し肉をつけてもいいと思う。本人に言ったら怒られそうだが。

「あいよ。焼いとくからお風呂入っておいで。」

「はーい。」

一瞬、娘が返事をしたのかと思うくらい、声まで似ている。そんな妻が自分の真横を通り過ぎるとき、ふっと香る煙草の匂い。昼間、最近入ってきた女子社員に言われた一言が頭をよぎる。

『奥さん、仕事とか言って本当は浮気なさってるんじゃないですか?』

下手したら父親とさほど変わらないであろう自分にやけになついてくれる、大人しそうな外見の彼女が発した言葉。ずいぶんはっきりとした物言いをする子だなぁ、と思ったくらいだったが、あながち否定できないかもしれない。前にも何度か嗅いだことのある匂いだ。妻も自分も喫煙はしない。それが一般的な煙草なのか、特徴的な煙草なのかすらわからないけれど、同じ匂いだ。今時職場は分煙だろう。喫煙しない妻に煙草の匂いがつくのはなんとなく腑に落ちないが、聞けるわけもない。

「ふぅ。」

小さくため息をついて、頭を横に振る。雑念は振り払って、妻のためのハンバーグを焼くことに集中しなくては。でも。外に男がいても仕方がないんじゃなかろうか。自分は主婦業こそ凛ちゃんより自信を持ってこなせるが、年齢は自分のほうがかなり年上にもかかわらず、収入は凛ちゃんのほうが上だ。夫婦生活だって、あまりそういうことに興味がなかったし、性欲がさほど強くない自分は経験も少なく、付き合っていた頃から凛ちゃんをちゃんと満足させたことはないと思う。口にはしないけれど、凛ちゃんは自分に対する不満があって、でも母親だから、一度結婚してしまったからガマンしてるんじゃないだろうか。もし外に男がいたとしても、自分には咎める資格はないんじゃないだろうか。資格がない、というより咎めた結果、凛ちゃんを失うのが怖い。だから帰りが遅かろうが何も言えないのだ。情けない男ではあるけれども。

妻がシャワーを浴びる音。湯気の中の妻の裸体を思い浮かべる。恥ずかしがって普段は見せてくれないが、柔らかくて白い肌。もう若くない、と本人は最近口にするけれどもまだまだ水をはじく。ちっちゃくて細っこいわりに出ている胸を撫でるのが好きだ。感じやすい凛ちゃんがあげる声が好きだ。あまり上手には触れないけれど、それでも乱れる凛ちゃんの呼吸が、声が、自分を興奮させる。あまり要求はしないけれど凛ちゃんの小さな手で、口で刺激してもらうのが好きだ。そう考えていたら、凛ちゃんを抱きたくなってきた。でももう時間も時間だ。凛ちゃんだって疲れているだろう。男と会っていたなんて自分の妄想でしかなく、本当に忙しいのだろう。無理やり納得させる。


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