投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

〜吟遊詩〜
【ファンタジー その他小説】

〜吟遊詩〜の最初へ 〜吟遊詩〜 21 〜吟遊詩〜 23 〜吟遊詩〜の最後へ

〜吟遊詩(第二部†旅立ち・試練†)〜-12

さりげなくダリアンを太陽の真下に移動させる。ダリアンは太陽に背を向け、ユノはダリアンを見ると陽の光が直に目に入るような位置になった。
そのまま持っていた剣の角度を微妙に変える。すると陽の光は剣に反射し、ダリアンの目に直撃した。剣に巻き付く鎖はさらに光を四方八方に反射させ、眩しさは増す。
「眩しっ…」
ダリアンは目を覆った。
(このまま刺すことも出来るけど。ダリアンに認めてもらうにはそれじゃぁ意味がない。ダリアンと同じ力で勝ちたい!)
ユノはダリアンが目を瞑っているうちに森に降り、身を隠した。
 森にはユノが知らないような葉やキノコがたくさん生えていた。靴を脱ぎ、足先を見ると霜焼をしたとき以上に真っ赤に腫れている。ユノは取り合えず知っている葉を摘み、石で潰した。ヨモギ、ミント、フキノトウ、ハーブ。どれも食べると体に良いものばかりだ。潰されたそれらを大きな葉っぱに乗せ、足に貼った。
ヒンヤリと冷たさが広がる……程でもないが、気休めにはなった。
「でもヨモギは自信があるんだよね!!万能だってじぃちゃんが……」
ユノはじぃちゃんの事を思いだし肩を落とした。突然握っていた剣が忌々しく思えた。忘れていたあの感触が蘇ってくる。じぃちゃんを刺した時の…。
「ごめん…嘘だよ。アンタのせいじゃない。私が弱いから」
溜め息を付きながらユノは剣に向かって謝った。自分のブレッドなのに忌々しく思ってしまった事が剣にバレたように思えたから。 『もぅ協力しないぞ』 剣がそう言いたげに輝いているように見えた。
それにしても森は静かで、戦いの最中にいることなど忘れてしまいそうだった。
木々の間から小さく見える空が気持いい。頬撫でる風が気持いい。空を仰ぎ、風を吸い込むと、ユノは森の全てを感じた。
(あれっ…この森って季節や場所、気候に関係ないように全ての植物が生えているな…)
「フキノトウは春先だし、ハーブは夏から秋にかけて…」
 ユノは森の中を歩いた。ある葉を探していた。森は終わりがないくらい広く感じられる。
「終わりがないって当たり前か…メインブロックの中なんだし」
そんなことを言っていると、
「あったー!!」
目当ての葉が見付かった。


 ダリアンは恐る恐る目を開けた。視界は青のような、緑のような、赤のような色が入り混じって見え、あまり良好ではない。周りはあまり見えないが、ユノの気配は感じられなかった。
「アイツ。トドメでもなんでも刺せばいいのに。逃げたのか?」
(初めて見たときからそぅだったが…理解不能なヤツだ…)
ダリアンは空から森の中を見て、ユノを探した。
━━チカッ━
視界の端に嫌な光を感じた。
(絶対アイツの剣だ…)
僅かな木々の間がチカチカと光っている。ダリアンは同じ手を喰らわないように目を細めながら慎重に近付いた。森の木にあと2、3mで届きそうな時、チカチカと光っていたものが急に伸びて来て、ダリアンの足に巻き付いた。
「鎖!?」
(アイツの剣に確か、鎖が巻き付いていた)
ダリアンは一瞬のうちに悟った。鎖は勢い良くダリアンを引っ張り、地上に叩き付けた。
「久しぶりだね」
と、ユノ。挨拶も早々にユノはダリアンに近付き、持っていた葉を露出された肌に擦り付けた。ダリアンはユノの鎖に縛られて身動きが取れない。
「私が知っているのはこれしかなかった」
ユノは笑って言った。それから、
「これはオマケ」
と言うと、ダリアンに無理矢理黄緑色をした葉を噛ませた。苦味が口一杯に広がる。
「これは…フキノトウ!?」
顰めっ面をしてダリアンが言った。
「そっ。特別に一番育ってたやつを採ってきたよ」
フキノトウは大きくなるほど苦味が増した。
「それからこっちは…」
ダリアンが自分の肌を見ながらそう言う頃、先程葉を擦り付けたところに変化が現れる。
「こっちは…漆だな」
ダリアンが呆れながら言った。
「当たりー!凄いね。ニホンって所ではそれをお椀とかに塗るらしいよ!!じぃちゃんが言ってた!」
見るとダリアンの肌は赤くただれていた。漆の葉は触るとかぶれる事がある。
「この森でこんなに低レベルな葉を持ち出したのはアンタが初めてだよ…」
(やっぱり変なやつだな)
ダリアンはもう反撃しようとも、逃げようともしなかった。ユノは鎖を解き、剣をブレスレットに戻した。
「なんであの時トドメを刺さなかった?」
ダリアンが不思議に思っていた事をユノに聞く。
「だって、これは殺すための戦いじゃなくて、私の力を試すためなんでしょ?殺しちゃったら認めてもらえないじゃん」
ユノは鼻を鳴らし、得意気に言った。
「生意気な…」
ダリアンはそうは言ったものの、笑顔だった。無表情だったダリアンの初めての笑顔……。
「その足じゃ…湖まで戻れないだろ」
そう言いながらダリアンは指を鳴らす。契約の紙が現れた。


〜吟遊詩〜の最初へ 〜吟遊詩〜 21 〜吟遊詩〜 23 〜吟遊詩〜の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前