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〜吟遊詩〜
【ファンタジー その他小説】

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〜吟遊詩(第1部†序言・運命†)〜-1

いつも同じ夢を見る…岩だらけのだだっ広い洞窟。鎖の鳴る音が反響する。ガシャッ!その音は一人の少女が動くたびに鳴り響く。少女の両手は高く空を仰ぎ、鎖で岩と結ばれていた。目隠しをさせられた少女は胸に蒼く輝く大きなネックレスを着けていた。その少女を見下ろす数人の人影。一人が何か言った。でもうまく聞こえない。その人は少女の髪を一撫ですると剣を取りだし少女を一突きする━━━…。
━━ジリリリっ━━
目覚ましが鳴った。
(はぁ〜毎日同じ夢で飽きたなぁ〜)
ユノは目覚ましを叩き壊して頭を抱えこんだ。夢はいつもここで終わっていた。もどかしさは有ったがそれも最初のうちだけで今は煩わしいだけのものだった。最も、最初に見始めたのがいつかは定かではなかったが。
ユノが部屋から出て階段を降りているとじぃちゃんとお客さんの声がしてきた。
「あと68番を10リットルください。」
壁に沿って高くそびえたつ何列も連なった引き出し。【68】のラベルが付いたそれを指差し、年老いたおばさんが言った。じぃちゃんが引き出しから透明な管を取り出すと赤黒い液体が中を流れた。試験管のような物に10リットルまで流し込むとそれをお客さんに渡し値段を告げた。そこに丁度ユノが姿を現した。
「じぃちゃんオハヨ!あぁタナカのおばさんだったの??今日はお祈りですか?それともザンゲ?」
ユノは声を張り上げて挨拶をした。ユノの家は教会だった。平行して〔ブレッド〕という赤い液体も売っている。ブレッドとは、イコール血であり、イコール能力である。人には産まれながらにして各々能力が授けられてあり他の人のブレッドを取り込むと、その人の能力が期限つきではあるが手に入れることができるのだ。
「あら、ユノちゃん。今日はブレッドを買いにきたのよ。ここは種類も豊富だし速効性があるから便利だわ。」
タナカのおばさんが満足そうに言った。タナカのおばさんはいわゆるお得意様だった。
「えっと…ユノちゃんのブレッド(能力)はやっぱり…」
少し顔を曇らせてタナカのおばさんは言葉を濁した。ユノにはおばさんが何を言いたがってるのかが分かる。でも何も答えることが出来ないでいると隣からじぃちゃんが口を挟んだ。
「こいつのブレッド(能力)は特別じゃけぇ血に現れんのじゃよ。何べんも血を採ってみたが使い物にならんかった…。」
そぅ…ユノは立派な能力を持ちながらも自分の体からブレッド(血)を採るとその能力は消えてしまい使い物にならなくなってしまうのだった。そして逆もまた然り。ユノの体は他のブレッドを受け入れることはできなかった。タナカのおばさんはユノを慰めようと
「ユノちゃんは純血なのよ。他のブレッドが混ざるのはよくないことだもの。」
と言った。

昼過ぎ…━━
ユノはじぃちゃんに呼ばれた。
「話がある…」
そぅ言うと不適な笑みを浮かべる。じぃちゃんは何時も真っ黒で端がシャープになってるサングラスをかけていた。その隙間からじぃちゃんの目が見えた。
(じぃちゃんの目…初めて見たかも。)
なぜか頭痛がした。そして一瞬いつもの夢が頭の中を巡った気がした。
「手短に話してよね!じぃちゃん話長いからっ」
ユノは煎れたての珈琲をテーブルに置きならがら言った。その言葉にムッとしながらもじぃちゃんは慎重な面持ちで言葉を発した。
「…ワシがお前を拾ったときからお前は純血だった。」
そのシリアスな話題にユノは少し戸惑った。
(そんなに真面目な話なの!?)
そぅ思いながら髪を掻き上げる。ユノの両手首からシャンッとブレスレットがなった。左手首には重く、真っ黒な鎖のみのブレス。右は2連のリングの間に間隔良く淡いブルーのガラス玉が数個付いているブレスだ。
「どーでもいいよ。純血とか言っても商売にならないブレッドなんてただの不良品だもん。」
ユノは捨て子であり、他の人とは違う血を持つ自分を不良品だと思っていた。
「きっと特別なんかじゃなくて世界中にたくさんいるわよ。」
溜め息混じりに呟く。それを遮るようにじぃちゃんが言う。
「お前を含めて五人しかおらんぞ?」
巧くその言葉を呑み込めないユノ。構わず続ける。
「ブルーストーンを知っとるか?知らんじゃろぅ。まぁお前の能力にも全てに意味がある。」
ユノの煎れた珈琲を飲み干すとじぃちゃんは本棚の方に歩き出した。本棚には重そうな本がずらりと並んでいる。その中から一際重そうで、優にユノの体の上半身近くありそうな大きさの本を引き出した。
「ワシは話が長いらしいからなっこれを読めっ!」
何時ぞやのユノの言葉に抵抗するかのようにじいちゃんが言った。じいちゃんの手によって置かれた本がドンッとテーブルを揺らした。
(読む方が嫌なんですけど…)
と思ったことは言わずにユノは素直にそれを受け取った。最後にじいちゃんは
「ただし!お前は自分の運命から逃れられると思うなよ」
と付け足した。


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