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〜吟遊詩〜
【ファンタジー その他小説】

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〜吟遊詩(第二部†旅立ち・試練†)〜-11

「私がダリアンじゃないってどうして分かるの?」
ユノは驚きながら相変わらず質問を続けた。しかしダリアンは、答える気がないと諭すように首を振るだけだった。
「無駄口はもういい。私はただの『力』であって人間のような『心』は持っていないんだ。戦いしかしらない。さっさとお前の力を試させてくれ」
ダリアンは言い終わると同時に地面を軽く蹴り、フワリと空に舞った。
(もぅ始めるの!?)
ユノは慌ててダリアンの後を目で追う。ユノを空から見下ろしているダリアンは、太陽の逆光のせいで黒い陰にしか見えない。
ダリアンの手の中が光り、何かが現れた。それをユノに投げつける。
白い紐のようなものだった。
それはあまりにも速くユノに向かってくるので避ることが出来なかった。
━━ビシッ━!!
紐はユノと近くに生えていた木に巻きつき、ユノを動けないように固定した。
いくらもがいても弛まないほどシッカリと巻き付いているのにきつすぎず、痛みがない。
「包帯じゃん!?」
白い紐は包帯だった。
「やっぱりナースの方なんだ!!」
ユノは自分の置かれている状況も忘れ、目を輝かせた。
「幻滅させるな…反撃する気がないならトドメをさす…」
ダリアンはそう言うと両手を空に向かって仰いだ。
「ディ・サィレンジ…」
小さく呟く。
━━ボンッ!!━━
白い煙を立ち上げ、ダリアンの両手には大きな注射器が現れた。それはダリアンの身長を遥かに越える大きさだった。
軽々と脇に抱え直すと、鋭く照り光る針をユノに向けた。
「ヤバイ、ヤバイ」
ユノは少しだけ自由のきく手で素早く剣を創造し、自分の体と木の隙間に剣を滑り込ませた。力を入れるまでもなく包帯は切れた。真っ白な包帯が足元に落ちる。
「それがお前のブレッドか。やはりダリアンとは異なる」
そう言うと、ダリアンはそのまま狙いを定めてユノに向かっていく。
「スピードは普通だね」
ユノは余裕があるように微笑むと、自分に向かう注射器を反らすように蹴った。ダリアンは反動で注射器に振り回され空で一回転すると、ユノの前に着地した。
ダリアンは横に大きな注射器を置いた。ダリアンと並べられたそれを見ると、やはりその大きさは一目瞭然だ。
「そんなに大きいの振り回したら疲れない?」
生意気とも取られそうだが、ユノは真剣に聞いた。
「平気。本来の使い方はこぅするものだから」
ダリアンはユノの失礼な発言も気にせずに答えると、注射器を蹴りあげた。
━━ズズッ…━
注射器が薬を入れた時のように伸びる。さらに長くなった。同時に不思議にも、中にクリーム色のドロッとした液体が現れた。
「なに?そ……!?…んぐっ??」
ユノが何か言おうと口を開いた瞬間、クリーム色の液体が注射器より発射された。
━━ゴクンッ…━
液体は見事にユノの口に治まり……。
「いっ…痛。」
ユノは突然手足を抱えてうずくまった。ユノの手足は赤く腫れ、激痛がはしった。
「『ドクササコ』…この森にある毒キノコだよ。これでもぅ剣は握れないだろう」
「…ずるい」
ユノはうずくまりながらも、恨めしそうにダリアンを見上げた。
「ずるくない…だから私には『ダリアン』しか勝てないんだ。薬品・薬草に詳しい者しか認めない」
冷たくダリアンは言い放ち、まだクリーム色の液体が残る注射器を撫でた。一瞬のうちに中の液体は消えた。更にもう一撫でする。今度は注射器も消えた。
「もぅ終わりか?戦う気がないなら私の糧になるしかないな…」
ユノはその言葉に腹が立った。先程の包帯が目に入る。
「まだだよ!」
その包帯でユノは自分の手に剣を縛り付けた。少し触れるだけで激痛が襲う。
「私、ここから絶対出てみせる!待ってる人がいるんだもん」
歯を食い縛り、ユノはダリアンに向かって行った。
━ガシャンッガシャンッ……━━
ユノの剣は何度もダリアンを目掛けて振り切られた。しかし、痛みのせいで鈍くなったユノの剣を避けることは容易だった。
(私の戦闘スタイルでは勝てない…)
ユノは飛べるダリアンに誘われるがまま、湖を離れいつの間にか森の上空に来ていた。木の反動を利用してダリアンに負けないくらい高く飛び上がったユノ。剣は相変わらず虚しく風を切り続けた。
(あっ……そーいえばあのキノコ。この森にあるって言ってた)
ダリアンの攻撃を避けたとき、ユノに森が見えた。
(私、薬草とかキノコなんて分からないけど…)
ユノの頭に考えが生まれる。
(マツタケくらいは見つかるかな…)
……目的が違うから…。的は外れているがユノは何か閃いていた。


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