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冥界の遁走曲
【ファンタジー その他小説】

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冥界の遁走曲(フーガ)〜第一章(前編)〜-4

4 月が、空高く登りだした。
今、どこの家も正常な時計であるならば夜中の8時をさしているはずだ。
闘夜は思った。
…長かった…。
闘夜が風呂に入っていた時間は45分。
普段の生活なら25分ほどで闘夜は風呂場から出てきている。
闘夜は怯えていた。
あの手紙に。
自分の”能力”の事が書いてあったあの手紙に。
”能力”があった故の過去に、だ。
怯えている時間さえなければ闘夜は普段どおりの時間には風呂からでられていた、と勝手に自負している。
それでも、その怯えを取り払う事はできなかった。
考える事はたくさんある。
あの手紙を送ってきたのは誰だろう?
何故自分の”能力”を知っていたのだろう?
何故、今になって会おうとしてくるのだろう?
まさか、自分の父か母では、とも思った。
しかし、その瞬間、自分の頭の中からまず父は消えた。
…父さんならあんな丁寧な文章は書かない。
闘夜の父は大雑波な大人であったからだ。
すると、次にでてくるのは母だ。
母は丁寧な大人であった。
そして自分の”能力”を知っている2人の大人の内の1人だった。
もちろんもう1人は父であるが。
しかし、闘夜は母をも除外した。
闘夜の知っている母ならそもそもこんな手紙は書かない。
…予告もなく俺を殺しにくるはずだ。
では誰が?
何故?
このような質疑の頭の中で何度も何度も回転させていた。
8時半。
闘夜はふいに時間が早くなったかのように感じた。
…嫌な時間ってのは来る時は早いんだな。
などと考えつつ、闘夜は心の中で行こう、と決心する。
しかし、闘夜はここで一つ考えた。
…”能力”を使って行こう。
と。
自分の”能力”を使えば、相手に会うことなく相手を見ることが出来る。
だから、闘夜は即座に”能力”を使った。
闘夜は寝転がって目をつぶる。
そして”能力”が発動するように意識する。
それだけで闘夜は能力を発動できるのだ。
しかし、”能力”を発動した所で闘夜の身体には何の影響も起きない。
闘夜の”能力”は精神と関係があるのだ。
闘夜は”能力”を使うと体を動かさずして精神だけで移動できるようになる。
世間でいう”幽体離脱”である。
そして闘夜の意識体(闘夜はそう呼んでいる)は触覚以外の四つの感覚を伴いながらあらゆる所を移動できるのだ。
移動に関しては小さな飛行機のようなだとだと闘夜は自負している。
速度は新幹線よりも速い。
前に競争してあっさりと勝利している。
自分勝手な勝負ではあったが。
そして高度に関しては雲のある所まで行った記憶がある。
途中で高すぎて怖くなったが。
…”能力”を使えば相手にバレずに相手が誰だか分かる。会うのはその後だ。
闘夜は意識体として、学校に向かった。
家のドアを開けずしてすり抜け、約30秒で学校に着いた。
そして、あっという間に屋上に着いた。
上に向かえばいいだけなのだから。
…誰もいない、か。
そこには誰もいなかった。
考えてみれば自分は焦りすぎていた。
時間はまだ8時半だった。
30分前とはいくら何でも早すぎる。
今は五月初旬、暖かくなってきたとはいえ、夜は冷える。
そんなときに早く来すぎる者がどこにいる。
と思い、闘夜が戻ろうとした時だ。
重い音が聞こえた。
闘夜はこの音を知っている。
学校のどこのドアを開けても重い音などなりはしない。
たった一つ、屋上のドアという例外を除いては。


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