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『あるM女の告白』
【SM 官能小説】

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第2部 SM観の大転換-13

13.忘れ物の凶器

「それに今度、自殺のことを考えたときものすごい恐怖感に襲われたのも、愛の命綱が働いたんだと思うよ。
自殺しようと考えることは、生きていてほしいというパパとママの思いを裏切ることになるから、無意識のうちに強いブレーキがかかったんじゃないかな。

死の恐怖は生きようとする命の叫びだから、それがあるうちはたいてい自殺しようとは思わないだろうし、たとえ自殺しようとしても実行は困難になるだろうね。
だから、自殺した子が出てキリスト教の学校に通っているという制約が崩れても、愛の命綱がしっかり麗さんを守ってくれたんだと思うね。

ところで麗さん自殺はね、たいていの場合、忘れ物の凶器を残していくんだよ」
「忘れ物の凶器?・・・ですか?」

「そう、自殺するってことは、残される人とのつながりを一方的に、断ち切ってしまうことだよね。
それは多くの場合、残される人の心を傷つけてしまうんだ。
でも、自殺する人は、それを意識していないことが多い。
だから、忘れ物の凶器になってしまうんだ。

忘れ物の凶器は、残される人の中でも、自殺する人を大切に思っている人ほど、深く傷つけてしまう。
それは、自殺ではなく事故だったけど、大切に思っているパパとママを突然失った麗さんには、よくわかるよね?」
「はい、すごくよくわかります。」
私は、もう自殺しようとは決して思わないという決心をこめて、大きくうなづ
きました。

そこでご主人様は、水を一口飲まれ、ちらりと時計をごらんになりました。
「あ、もうこんな時間になってしまったね。
あと一つ、悪夢の問題が残っているけど、お家の人が心配するといけないから、麗さんはもう帰らなければいけないね。
麗さんがよければ、今晩9時くらいからチャット風にメール交換して、一緒に
考えてみようと思うけどどうかな?」

「あのう、悪夢のことも、もう解決の方向が見えているんですか?」
「まだ、推測の段階だけど、麗さんが協力してくれれば、解決できる可能性は十分あると思うよ」

もう、死のうとは思いませんが、悪夢のことはすごく気になります。
ご主人様には、解決の方向が見えていらっしゃのなら、きっとそうしてくださる!
私はもう、そう堅く信じられるようになっていました。
喜びがこみあげてきて胸がいっぱいになり、
「ありがとうございます。是非お願いします」
というのがやっとでした。

「よし、じゃあ、今夜9時くらいにメールするからね」
そういって、ご主人様は立ちあがられました。
「はい、今日は本当にどうもありがとうございました。重ね重ねですみませんが、今晩もどうぞよろしくお願いします」
私も立ち上がってそういい、丁寧に頭を下げてお辞儀しました。

駅に向かうために乗った下りのエレベーターは、ご主人様と2人きりでした。
「あのう、抱きついてもいいですか?」
乗って扉が閉まると私はご主人様を見上げて、おずおずとおねだりをしてしまいました。
ご主人様はニコッとして、うなずいてくださいました。
私が抱きついて胸に顔をうずめると、ご主人様は優しく抱きしめてくださいました。

「これからも、時々会ってもらえますか?」
と、顔を上げてお尋ねすると、大きくうなずいてくださり、
「もう、死にたいなんて思わないよね?」
といって、強く抱きしめてくださいました。
「はい」
そうお答えし、私は何度も何度もうなずきました。




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