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先生の観察日記
【学園物 官能小説】

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卒業-2

――――――


いよいよ3年生は卒業式を翌日に控えていた。全校生徒が体育館に集い、卒業式のリハーサルを行う。いろんな思い出が脳裏を駆け巡っているのであろう、すでに泣き出している生徒が何人かいた。

私も、先生のことを思い出したら泣いてしまいそうだった。さよならを言うことができず、今週は先生の部屋に行っていない。別れの言葉を口にすると、本当にもう会えないような気がして…私は先生に何も言わずに去るつもりだ。

卒業式が終われば、荷物も一気に片付けなきゃいけないし、部屋だって探さなきゃならない。引越しも初めてだから、苦労するだろうな…きっと忙しくて、先生のことなんてすぐに忘れられる。

卒業式の席が、橋本クンの隣だったことは唯一の救いだった。どんよりと重い心が、誰かと話をしていると少しは紛れる気がする。

「橋本クンって、進路どうなったの?」

「あぁ、俺はここの大学決まったよ。もちろん文学部。」

橋本クンは、自慢げにピースをしてみせる。

「ふふっ、橋本クンらしいねっ。」

「だろっ?」




「――えぇ、ではお世話になった先生方の離任式を引き続き執り行いたいと思います。」


教頭がマイクで話しはじめた。毎年、卒業式のリハーサルと一緒に離任式を行うなのが恒例となっている。

「では、先生方は壇上におあがりください。」

ぞろぞろと、数名の教師が連なって、舞台へと上がる。
…その列の最後尾に、先生がいた。

「えっ―」

「おい、あれって相田じゃ…江口、このこと知ってたか?」

私は力なく笑い、首を横に振る。先生だって、私に何も言わずに終わらせるつもりだったんだ。お互い傷つかないで済むし、私のことを思ってくれてのことなのかな…

「ちょっ、おい、泣くなよ!」

隣で橋本クンがおろおろしている。私は気付くと涙を流していた。

離任していく先生方が思い思いのスピーチをしているが、私の耳には入ってこない。

ただ、先生のいろんな顔が次々に思い返される。

クールな表情とか、何かを考えてる真剣な顔とか…ベランダで静かに煙草を吸っている姿、コーヒーを少しずつ味わう表情、黙って私の髪を撫でる腕。先生はいつだって静かに見守ってくれた。ただ側にいてくれるだけで心が満たされたなんて、クサいこと言うようだけど、本当のことだもん…


「―では、最後に相田先生、ご挨拶を。」

教頭に指名された先生が、一礼してマイクの前に立つ。最後の挨拶だっていうのに、先生はいつもの白衣に、無造作ヘアという出で立ちだ。これだから、物理オタクって言われちゃうんだよ…まったく、先生は…泣きながらも、自然と笑みがこぼれる。最後くらい笑って見届けようと思えた。

「えぇ、ここに来てまだわずか3年ですが、かねてからお世話になっていた教授からのお誘いを受けることにし、教師を辞め、研究部に移ることとなりました。短いだったけど、本当に楽しかった。」

先生は挨拶をしながら舞台の上からまっすぐに私の目を見ている。やだな、泣いてるとこ見られちゃった…


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