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一枚の写真
【初恋 恋愛小説】

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ヒロ兄ちゃんとユキ姉ちゃん-8

「全部だよ!!」
「全部って?」
「例えば....少し我が儘な所、ドジでおっちょこちょいな所、すぐに拗ねたり、怒ったりする所、それから....」
「ちょっと!なんか全然嬉しくないんだけど....」
ヒロ兄ちゃんの言葉を遮るようにユキ姉ちゃんが言った。
「こういうふうに、すぐに拗ねてしまう!」
「ヒロ!!」
「そしてすぐ怒る!」
「ヒロ!!いい加減に....」
ユキ姉ちゃんが言いかけた時、
「他の人だったら、嫌だなぁって思う所もユキだったら許せてしまう!それはきっとユキの事が全部好きだからなんだよ!」
ユキ姉ちゃんは真っ赤な顔をして嬉しそうにしていた。
「そんなふうに言われたら何も言えないじゃないの.....」
ユキ姉ちゃんは俯きながら呟いた。
「すみません。ちょっといいですか?」
後ろから声がした。私達が振り返ると、ヒロ兄ちゃんと同じ位の年齢のカップルが立っていた。
「ハイ?」
ヒロ兄ちゃんが返事をすると、
「写真撮って貰ってもいいですか?」
そう言ってカメラを差し出した。
「いいですよ!」
ヒロ兄ちゃんは立ち上がってカメラを受け取った。
「ハイポーズ!!」
ヒロ兄ちゃんは写真を撮って、二人にカメラを渡した。
「すみません。ありがとうございます。」
彼氏がカメラを受け取った時、
「あのぅ、俺達も撮って貰っていいですか?」
「いいですよ。」
彼氏のほうが了承してくれたので、
「ユキ、カメラ出して。」
「うん。」
ユキ姉ちゃんはバッグからカメラ出して、
「すみません。お願いします。」
そう言ってカメラを渡した。ヒロ兄ちゃんは左腕に私を抱きかかえた。ユキ姉ちゃんは私の隣に立って、
「美香ちゃんカメラを見て笑って!」
私の顔に自分の顔を近づけて言った。
「ハイポーズ!!」
「どうもすみません。ありがとうございます。」
ユキ姉ちゃんはカメラを受け取って、頭を下げた。ヒロ兄ちゃんも頭を下げていた。
「こちらこそありがとうございます。」
二人も頭下げて帰って行った。
この時撮った写真が、私が大切にしているこの写真である。まさかこの写真がヒロ兄ちゃんとユキ姉ちゃんが二人揃って写った最後の写真になってしまうとは....私も....そして....ヒロ兄ちゃんユキ姉ちゃんも....想像していなかった....。
「遅くなるから、そろそろ帰ろうか?」
ヒロ兄ちゃんの言葉に、
「そうね!」
ユキ姉ちゃんは周りを片付けて、
「じゃぁ、帰ろう!」
私達は来た時と同じように手をつないで帰った。
駅に着くと普通電車が到着していた。快速電車の到着待ちだった。
「別に急いでいる訳じゃないから普通電車で帰ろうか?そのほうが座れると思うし....」
「そうね....そのほうがいいかもね!」
ヒロ兄ちゃんにユキ姉ちゃんが同意したので、私達は普通電車に乗り込んだ。予想通り座る事が出来た。私を挟んでヒロ兄ちゃんとユキ姉ちゃんが座った。私とユキ姉ちゃんは今日の事を夢中で話していた。
「ユキ!美香ちゃん!」
ヒロ兄ちゃんの声に顔を上げると、ヒロ兄ちゃんが私達の前でバッグを肩にかけて立っていた。横を見るとヒロ兄ちゃんが座っていた所にはお婆さんが、そしてその隣にお爺さんが座っていた。
「ユキ!美香ちゃん!」
ヒロ兄ちゃんはもう一度そう言って、口の前で人差し指を立てた。周りを見るとさっきより人が乗っていた。
「あっ!」
ユキ姉ちゃんは何かに気づいたようで、
「美香ちゃん!どっちが喋らないでいられるか競争しようか?」
「えっ?」
私が不思議そうにしていると、
「今までいっぱい喋ったから....嫌?」
私は少し考えて、
「いいよ!」
そう答えると、
「良かった!」
そう言って笑った。


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