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一枚の写真
【初恋 恋愛小説】

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ヒロ兄ちゃんとユキ姉ちゃん-9

「ヒロ!バッグ!」
「あっ、ありがとう!」
ユキ姉ちゃんはヒロ兄ちゃんから受け取ったバッグを膝の上に乗せて、
「それじゃぁ今からね!」
私のほうを見て、口の前で人差し指を立てた。私は黙って頷いた。電車の窓からの暖かい日差しと電車の心地良い揺れに私とユキ姉ちゃんはいつの間にか眠っていた。
「ユキ!美香ちゃん!」
ヒロ兄ちゃんの優しい声と軽く頬を触られる感覚に目を覚ますと、私達の前にお腹が大きい女の人と私より小さい女の子が立っていた。ユキ姉ちゃんはヒロ兄ちゃんにバッグを渡して立ち上がった。ヒロ兄ちゃんは腰を曲げて、私の顔に自分の顔を近づけて、
「今度は三人でどれだけ立っていられるか競争しようか?」
私が渋っていると、
「もしも、美香ちゃんが降りる駅まで立っていられたら、また三人で遊びに行くってのはどう?」
ヒロ兄ちゃんが聞いてきた。
「本当に?」
「今度また土曜日に休みが取れたら三人で遊びに行こう!!」
「約束だよ!!パパ!」
「うん!約束!!」
「良かったね!!美香ちゃん!」
ユキ姉ちゃんも笑顔で私に話しかけた。
「うん!」
私は座席から飛び降りた。ユキ姉ちゃんはお腹が大きな女の人と女の子に席を譲った。彼女は初め遠慮していたがユキ姉ちゃんが強く薦めるので座ってくれた。私はヒロ兄ちゃんにしがみついていた。ヒロ兄ちゃんは私を支えるように背中に手を当ててくれた。
「今度はどこに遊びに行こうか?」
私は少し考えて、
「パパとママと一緒ならどこでもいいよ!!」
「そうだなぁ....どこがいいかなぁ....ユキはどこがいい?」
「私もヒロと美香ちゃんが一緒ならどこでもいいよ!!」
「別に今決めなくてもいいよね?また考えておくよ!!」
「楽しみにしてるね!」
「美香ちゃんが喜んでくれるといいんだけど....」
「パパなら大丈夫だよ!!ねっママ!」
「うん!そうだね!!」
「オイオイあまりプレッシャーをかけないでくれよ!」
私達のそんな様子をヒロ兄ちゃんが席を譲った老夫婦や母娘が微笑ましそうに見ていた。しばらくは平気で立っていられたが、やはり疲れが出てきた。そんな私の様子に気づいたヒロ兄ちゃんが、
「美香ちゃん疲れたの?抱っこしてあげようか?」
そう言ってくれたが、私はまた遊びに行きたかったので、
「大丈夫だよ!!」
そう強がってみせた。
「無理しなくてもいいんだよ!!」
「でも.....」
私が躊躇っていると、
「さっきの約束なら気にしなくてもいいよ!俺もユキも美香ちゃんと遊びに行きたいと思っているんだよ!!だからさっきの約束なんか無くてもまた遊びに連れて行ってあげるよ!!ねっユキ?」
ユキ姉ちゃんのほうを見ると、
「そうだよ!」
笑顔でそう言ってくれた。ヒロ兄ちゃんがバッグをユキ姉ちゃんに渡して、私を抱き上げようとした時、
「お爺さんちょっと詰めてくれる?」
私の前に座っていたお婆さんがそう言って少し横に動いてくれた。母娘のほうも少し動いてくれた。すると私が座れるぐらいの場所が空いた。
「お嬢ちゃんどうぞ。」
お婆さんが言ってくれた。ヒロ兄ちゃんの顔を見上げると、
「いいよ。座らせてもらいなさい。」
私にそう言った後、
「すみません。ありがとうございます。」
そう言って頭を下げた。私が座ろうとすると、
「あれっ?美香ちゃん約束は?」
ユキ姉ちゃんが小指を立てて言った。
「あっ忘れてた....ありがとうございます。」
私改めてそう言って座った。
「お利口さんね!」
隣に座っていた女の人が言った。私は何故か恥ずかしくて下を向いていた。


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