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シグナル
【青春 恋愛小説】

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シグナル¨11¨-1

今年もあの日が迫ってきている。
私達女の子にとっては勝負の日が・・・
チョコを大事な人に渡して想いを伝える、一年に一度しかない大事な日だ。

「どれにしようかなー。こっちのもいいし、ホワイトチョコもいいしなぁ」

こんな時、私の悪い癖が恨めしくなる。
棚に並んだ色々な種類のチョコに目移りしてしまい、ひとつに決められない。
どれをあげても賢司くんの喜ぶ顔が頭に浮かんで、更に迷ってしまう。

「いっそ全部買っちゃおうかなー」

財布の中身を確認してその考えを即却下した。

でも、もし買えたとしても賢司くんは喜ばないだろう。
私が賢司くんの立場でも、何個も私からチョコを貰っても嬉しくない。
やっぱり・・・気持ちがこもってなくちゃダメだよね。

そう思うとますますひとつにしぼれなくなりそう。ああっ、どれがいいの?
チョコそのものじゃなくてチョコチップのクッキーも喜びそうだし・・・

「杏子、いつまで迷ってるの。早く決めなよ」

ずっと待っていた遥が待ちきれなくなって、私に促してきた。

「う、うん。分かってるよ、でも色々あるから」
「買おうとしてたでしょ。取り敢えず棚一列分とか」
「違う、よ。そんな事しないってば」
「何でチョコ買うのに迷うの。溶かすから普通のでいいのに」

こんなに迷うのは悪い癖だね。分かってるんだけど、なかなか治らないんだ。

「もう気は済んだ?杏子」

弥生も遥ももう買い終わってたので、私は苺の板チョコをレジに持っていった。

「あんた、材料じゃなくてプレゼント用の買おうとしてたでしょ」
「違うよー。考えはしたけど」
「あたしが貰う立場だったら、スーパーで買った普通のチョコだけは嫌だけどね。気持ちこもってますとか、誰が信じるかっての」
「そ、そうだよねー。いくら賢司くんでもマジギレするよね・・・いやだから、しないってば」
「あの熊みたいな手でアイアンクローされるよ。長生きしたければ手作りにしといた方がいいかも」

大切な人にあげるチョコ。
どうせなら手作りにしようって皆で決めた。
速人くんだけは弥生に聞こえる様にアピールしてたけど、きっと成敏くんも、そして賢司くんも手作りの方が喜ぶと思う。

でも、不安だった。
私達は料理はそれなりに出来るけど、お菓子を作った事が無い。
高校の時からずっと普段食べるお菓子はコンビニで買ってた。
あんまり多くは買わないし、手作りの方が高くつきそうだからわざわざ作らなかった。

遥のアパートに集まり、それぞれ買ってきた材料を机に並べた。
板チョコ数枚の他に、遥は薄力粉やナッツを買ったみたい。
弥生は・・・コーンフレークだ。どんなふうに使うんだろ?
そして私はさっき買った、ピンク色で可愛い苺のチョコ。
あと、アーモンドも。
どっちも私にとって無くてはならない物だ。



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