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シグナル
【青春 恋愛小説】

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シグナル¨8¨-1

先月から学校の中が騒がしくなってきたと思ったら、学祭の準備が始まっていたらしい。
それで、今日はめでたい学祭の当日だ。
中はデパートのフードコートみたいな、甘さが焦げ付いた様な匂いが充満している。

平日と同じく、今日みたいな日も僕らは一緒なんだけど・・・

「わぁ〜人だらけだねー。なんか満員電車みたいで酔っちゃいそうだよー」
「大丈夫か?あんまり俺から離れんなよ」

賢司と葉川さん、もうくっついてる。
あんなに大きな手に繋がれたら安心するだろうな。

「あの、弥生・・・」
「何?」
「手を繋ぐのは嬉しいんだが、ちょっと痛いぞ。力強すぎる」
「え、嬉しくないの?あたしはめっちゃ嬉しいけど」
「痛ぇって!やめろ!」

織田さんと速人も同じく手を繋いでいる。
わざと強く握ったりしてふざけてるけど、織田さんはとっても嬉しそうだ。
でも速人はもっと嬉しそうな顔をしている。
当たり前か。付き合い始めてまだ1ヶ月くらいだもんね。

速人曰く僕のアドバイスのおかげらしいけど、そう言ってくれるのは嬉しいな。

「お前はやらねえのか」

賢司の言ってる意味が分からず返事できないでいると、妹尾さんを指差した。

「手を繋げって?!そ、それはぁ・・・!」
「これからだよ、ね。成敏くん?」
「えっ?!うん・・・そうそう、これからね」

焦ってしまった僕とは違い、軽く流した妹尾さん。
これから、という言葉に思わず期待してしまうけど、なんだか僕だけ舞い上がってるみたいだな。
きっと妹尾さん自身は深い意味はないと思って口にしたんだろうけど・・・

「ねえねえどこ行こっか賢司くん。面白そうなのいっぱいあるよー」
「そうだな・・・おう、結構色んなのあるじゃねえか」
「映画研究会、落語研究会、わあー見て、プロレスまであるよ。んー迷っちゃうなぁ」
「おし、決めた。まずは焼きそばからだ」

一緒にパンフレットを見たけど葉川さんの言うとおり、催し物が沢山ある。
でも、賢司はすぐに決断した。頼りになるなぁ。

「うへへへミスコンかぁ・・・まずこれにしようぜ」
「3時からだからまだあるね。まあ、もうやってても行かせないけど!」
「痛いって!これ以上力入れんな!」
「それより射撃にしない?見て、景品DSだって!」
「簡単に獲らせてくれねえって。でも弥生が行きたいならいいぞ」

皆行きたいところは決まったみたい。じゃあ順番で・・・

「迷子になんなよ」
「また子供扱いしてー。大丈夫、頼りにしてるから」
「俺の傍から離れるな・・・おまえは必ず守ってやる」
「はいはい、早く行こう。DS獲られちゃうよ」

でも、行く方向がバラバラだった。
ちょっと待ってよ、皆で遊ぶんじゃないの?!

「・・・後はお前次第だ。頑張れよ」
「俺がしてやれるのはこれくらいだが、頑張れ」

賢司と速人は僕にそっと耳打ちし、それぞれの目的地へ向かっていった。

・・・頑張れ、か。


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