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シグナル
【青春 恋愛小説】

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シグナル¨7¨-5

「ばっ馬鹿、なんでそんな回すのよ!降ろして!」
「はっはっはっ、悪いな。テンション上がってんだよ」

ハンドルをぐるぐる回され、ちっともゆっくり出来なかった。
まったく・・・ガキなんだから。休まなくて大丈夫なの?

「あー回ってる、目の前が回ってる。うう」
「俺は平気だぞ。回転系には弱いんだな」
「あんまり聞いた事ないけど、そんな言葉。さっ、じゃ次はあそこ!」
「おう、また絶叫系な。いいぞ、腹はもう決まってる」


・・・速人と話してて楽しい。

「行こうよ。なんか腰引けてない?」
「そんな事は無いぞ。き、気のせいだ」
「さっき回しすぎたんだよ。あたしだってまだ頭ぐらついてるし」
「だから大丈夫なのだ!ほら、真っ直ぐ歩けてるだろ」

やっぱりちゃんと歩けてない。
でもさっきよりは平気っぽいし、これなら乗っても問題ないだろう。

「しかし、お前が楽しそうで何よりだ。学校にいる時よりいっぱい笑ってるぜ」
「マジ?」
「いつもそれくらい可愛いと嬉しいんだがな。まあ、仕方ねえか。俺が怒らせてばっかだしよ」
「なによ急に。どした?」
「なんでもねえ!楽しもうぜ、まだまだ時間はあるんだからな!」

速人は怖がってたのはその時くらいまでで、後は楽しんでいた。
遊んでるうちに暗くなってきたから、最後に観覧車に乗る事にした。

「ふう・・・疲れちゃった。こんな騒いだのプール以来だな」

速人は向かいに座って、外を見下ろしている。

「ね、今日はありがと。マジ楽しかったよ」
「そうか、良かった。俺は・・・ちょっとはしゃぎすぎたな。絶叫尽くしで」

苦笑いしてるその顔に疲れが見えている。
やっぱり今日は無理してたのかなぁ・・・苦手なのに、あたしに付き合ってくれたのかもしれない。
笑ってはいるけど少し辛そうだった。

「あの、さ、本当は苦手だったんでしょ。無理して付き合ってくれてありがとう」
「よせよ。どうした?お前らしくねえ。腑抜けてんじゃないよって尻でも叩くのかと思ってたのになぁ」

そう言われて、気付いた。
あたしが・・・速人を心配してる・・・って。

「ま、らしくねえのは俺もかな。ちょっとしおらしかったからなぁ、はっはっはっ」
「うん。今日はあんまり冗談言わなかったね。だからその分楽しかったのかも」

そこで会話は途切れた。
といっても速人は明るい表情なので気まずい雰囲気じゃない。

・・・今なら言えるかも。

「ねっ、速人・・・」
「なんだ、弥生」
「あたし、あんたに言わなきゃいけない事があるの」
「・・・おう」

観覧車はもう間もなく一番高い所に登る。
変なタイミングだけど今はそれは些細な問題だ。


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