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シグナル
【青春 恋愛小説】

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シグナル¨5¨-5

「成敏くん」
「せ、妹尾さん。あの、その・・・」
「ちゃんと滑れたね。速人くんと一緒に」
「うん・・・」

妹尾さんは気にしてないみたいだけど、なんかすっきりしない。
僕はちゃんと自分からいきたかった。

でも、果たしてそれが出来ただろうか?
速人がしなかったらずっとあそこにいたかもしれないな・・・

夏休みの少し前に遊びに誘おうとしてたのが、今では信じられない。
ただ思うだけなら簡単なんだな、と思った。


僕達はそれから流れるプールで流れに逆らったり、普通の所で潜水しながら競争したり、周りの迷惑を一切考えずにはしゃいだ。
最初は止める方だった賢司や織田さんも、次第にはしゃぐ様になっていった。

楽しい時間はすぐ過ぎてしまうもので、気が付けばもう帰る時間だった。


「はあ・・・疲れたぁ」
「・・・楽しかったねぇ・・・」
「・・・・・・」


行きの時とはまるで違い、みんな魂が抜けてしまったみたいに静かになっている。

それでも、いい気分だ。
まだ体が波打ってるみたいで、気持ち良く揺れている。
こんな感覚味わったの久々な気がするよ。

「あー、今日はマジ楽しかった。ほんじゃ、またね」
「おう弥生、またな」

降りる駅が違うので織田さんはここでお別れになった。
ドアが閉まって電車が動き出してもまだ見送っている。
その様子で今日が本当に楽しかったんだというのが分かって、ちょっと辛くなった。

「なんかいってあげれば良かったのにー、速人くん」
「はあ?やだよ、あいつ今日散々な目に合わせやがって、誰があんなやつに・・・」

いつにも増してつっこまれまくってたもんな、速人。
素直になれないのもちょっとわかる気がするよ・・・
そういう速人ももう降りる駅に着いて、別れた。

「じゃあなお前ら。また明日泳ごうぜ」
「そんな簡単に全員集まれるか!」

織田さんとは違いさっさと改札に走っていく。それを見てくすくす笑う葉川さんと妹尾さん。
あれはあれで、あいつらしいね。

そして、すぐに妹尾さんの降りる駅に着いた。
こうして少しずつ減っていくのは寂しいなぁ・・・

「今日はいっぱい泳げて楽しかったよ。また明日行こっか?」
「だから簡単に集まれるかっつーの、お前はあの青ヒョロか」
「ふっふっふふ」

冗談を言うくらい楽しかったんだな。
織田さんと同じく、発車してもずっと見送っていた。


そして僕も降りる時が来てしまった。
嫌だな・・・降りたくない。また明日も会えるよね?

「お前、目潤んでないか?」
「何言ってんだよ!泣くわけないだろ!」
「ホントー?なんかうるうるしてるよ成敏くん」

降りて、賢司と葉川さんが乗る電車を見送った。
織田さんや速人、妹尾さんもこんな気持ちだったのかな・・・



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